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         構造調整政策(サップ)

 

 途上国に行ったことのある方なら、街角や村で「IMF(国際通貨基金)」や

「ワールドバンク(WB:世界銀行)」、「サップ(SAP:構造調整政策)」とい

う言葉を何度か聞いたことがあるに違いない。IMFとWBが私たちを苦しめてい

ると。

 

 現地の新聞漫画でも、IMFやWB、SAPといった文字は繰り返し目に入ったこ

とだろう。

 

 途上国に緊縮財政とリストラを要求するIMFの「構造調整政策」が、いかに途上

国の自己決定権(主権)に干渉し、人々のくらしや環境を脅かしているか。それは、

一九九二年リオデジャネイロでの「地球サミット」、九五年コペンハーゲンでの「国

連社会開発サミット」など、一連の国際会議でも問題になった。

 

 今やIMFやWBは、貧困をなくすための中立的な国際機関ではなく、むしろ、途

上国の貧困を作り出す原因にさえなっている、といわれる。

 

 それは、七〇年代半ば、オイルショックから始まった。

 

 当時産油国は、原油価格を四倍に引き上げた。そして、得られた収入を先進国の民

間銀行に預金した。

 

 多額の預金を得て、資金がだぶついた銀行は、途上国の「開発」に投資することに

した。

 

 バブル期の日本のように、「開発資金」は、楽観的な雰囲気の中で、気前よく貸し

付けられていった。そして途上国政府は、無責任にも、明らかに返済不能な額までを

借りていった。

 

 この大盤振る舞いは、八一年のレーガン米大統領の就任で一変する。

 

 レーガン政権は、インフレを抑えるため、高金利政策を始めた。それが、世界的な

利率引き上げを呼んだ。変動金利制度をとっていた途上国は、返済金利が急激に膨張し

て、さらなる「債務の罠」にはまったわけだ。

 

 八一年にはメキシコが債務返済不能に陥った。これに端を発した経済危機は世界中

に波及した。途上国のパンクは、多額の資金を貸し付けている先進国の銀行のパンク

にもつながる。ここで「お助けマン」を自認するIMFが、「一時的に助けてやる」

条件として、厳しい緊縮財政とリストラを途上国に要求した。それがSAPだ。

 

 SAPは、政府の役割を最小限に抑え、経済を「自由」に任せようという政策だ。

財政支出を抑えるため、保健医療と初等教育の予算が削られる。国営企業は民営化さ

れ、通貨を切り下げ、関税も引き下げられる……。死にかかった経済を立て直すため

の「自由主義経済原理」に基づく大手術、と説明された。

 

 多くの途上国が、自国通貨を、世界通貨であるドルに対して切り下げた。

例えば1ドル百円を1ドル二百円に設定し直せば、千円の商品は十ドルだったものを

五ドルにして世界市場に出すことができる。安く設定した自国製品(食料や工業用原料

)を輸出にまわして外貨を稼げ、とのIMFの処方箋だった。うまくいけばよかったの

だが、、、

 

 途上国からの輸出品は、どこでも似たようなものが多い。同じようなも

のが世界市場に、しかも一度に出回れば、当然値崩れが起きる。値が下がっても、輸出

総量を無理にでも増やして、「借金返済」のための外貨を得ようとした。

 

 まさに、悪循環だ。

 

 資源の投売りは、熱帯雨林を消失させ、すらむを拡大し、飢える人々を増加させた。

貧しい人々の主食であるトウモロコシが家畜の飼料用として輸出にまわされ、

「飢餓輸出」とさえ言わ

れた。

 

 こうして、自然を破壊し、途上国の天然資源を急速に枯渇させてまで強行された

輸出によって、先進国の銀行は救われたのだった。

 

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