小規模農家に、食べものの次に望むものは何かと聞いたとき、

まず返ってくる答えはどこでもほぼ例外なく「子どもの教育」になる。
子どもに十分食べさせてあげることができたら、
次に頭をよぎるのが学校だが、それにはお金がかかる。
学費や制服、教科書のたぐいだ。
さらには、住居、着る物、医者通い、そして携帯電話
(村外との唯一の連絡手段である場合が多い)
なども家族にとってなくてならないもので、すべてに現金が要る。
では小規模農家は収入源をどこに探したら良いのか。
答えは、家族が食料を得ているまさに畑にある。
前述した最低限のニーズ以上のものを満たそうとするのであれば、
販売・換金用の農作物を作らなければならないことになる。

しかし、市場での売買は畑で仕事をするのとは全く別の世界の話となってくる。
十分な教育を受けたことのない零細農家がそこで利益を生み出すのは
並大抵のことではない。
豊作になれば値は下がる。
都会に持って行けば確かに良い値は付くが、
輸送にかかるコストでしばしば儲けは消えてしまう。
そのため多くの農家は仲買人に言い値のままで売るしかない。
フェアな値になることもあるが、ほとんどの場合そうならないし、
仲買人との関係で言えば農家には値段の決定権がないのだ。
生産品の売買について農家が抱えるこうした長年の課題を前にして、
農家がダイレクトに利益を上げることができるようなビジネスならびに
マーケット戦略を地域のコミュニティで考え出した卒業生が数多くいる。

【第9章 市場で売ること、起業すること 「農村指導者たち」アジア学院】
http://www.ari-edu.org/2017/03/20/en-ruralleaders/


信濃毎日新聞 2017年4月30日

inserted by FC2 system