「市民社会が息をする場所を奪われるなら、欧州は黙っていてはいけない」

ソロス氏共同創設大学「閉鎖」 ハンガリーで法改正 強権批判

写真 4日、ブダペストの「中央ヨーロッパ大学」前で、
同大閉鎖に向けた法改正に抗議する人たち(AP=共同)

【ウィーン共同】 ハンガリー議会は6日までに、
同国出身でリベラルな発言を続ける米著名投資家の大富豪
ジョージ・ソロス氏が共同創設した「中央ヨーロッパ大学」の閉鎖
に向け、オルバン首相が進める教育関連の改正法案を可決した。
AP通信などが伝えた。
米政府やノーベル賞受賞者らが可決回避を求めていた。
政権の強硬な手法に国際的な批判が集まりそうだ。

同大学は冷戦終結後の1991年に設立され、
93年から首都ブダペストにキャンパスを置き、
計約1400人が在学。
運営組織は米ニューヨーク州にあり、外国の大学とみなされている。

共産政権下の反体制派だったオルバン氏はソロス氏の団体の奨学金
を得て米国に留学したが、政界進出後に保守化した。

オルバン政権は、対立する左派の野党が
外国資本家の支援を受けていると非難。
ソロス氏を「非愛国者」と呼んで対立し、同氏の関連団体について
「市民を装うスパイ組織」で政府を攻撃していると訴えている。

改正法は外国の大学について、母国にもキャンパスを設置することが
必要で、ハンガリーと母国の政府が協定に署名しなければ
学位を授与できないと規定。
中央ヨーロッパ大学は、ブダペスト以外にキャンパスがなく、
このままだと閉鎖される。

同大学は4日、「学問の自由を危険にさらす」との声明を発表。
ドイツのシュタインマイヤー大統領は
「市民社会が息をする場所を奪われるなら、欧州は黙っていてはいけない」
と強調した。

(信濃毎日新聞 2017年4月7日)

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スノーデンの言葉に考えさせられる

権力側は、しばしば「やましいところがなければ、監視されるのを嫌がらなくてもい
いだろう」と言う。だが、そこが問題なのだ。人のプライバシーは、それほど軽いもの
ではない。米国国家安全保障局(NSA)の元局員で、NSAによる個人情報収集の手口を告
発したエドワード・ジョセフ・スノーデンは、インタビューにこう答えている。

「政府はよく監視について『隠すことがないなら恐れることはないだろう』と人々に
向かって言います。このフレーズはナチスのプロパガンダから来ています。けれどプラ
イバシーはなにかを隠すためにあるのではありません。プライバシーはなにかを守るた
めにある。それは個です。プライバシーは個人が自分の考えをつくりだすために必要な
のです。人は自分の信じるところを決定して表現するまでに、他人の偏見や決めつけを
逃れて、自分自身のために考える自由が必要です。多くの人がまだそのことに気づいて
いませんが、だからプライバシーは個人の権利の源なのです」
(小笠原みどり『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』
173ページ、毎日新聞出版、2016)。

監視それ自体と監視される側の行動の善し悪しとは全く関係ない、とスノーデンは指
摘し、同書でこう述べている。「この問題はそうではなくて、市民社会と最も特権と影
響力を持つ役人たちとの間の力のバランスの問題なのです。プライバシーがなくても構
わないと主張する人は、表現の自由なんかなくても構わないと主張しているのと同じで
す。自分には言うことがなにもないから、と」。

病院で働きながら、ふと感じるプライバシーへの懸念の根本を言い当てられたようだ。

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