環境基本法改正の方が有効 大阪市大名誉教授 宮本憲一


人間の生命を脅かすような公害が発生する手前の段階では必ず、
環境が破壊されている。
美しく安全な環境の質を保つことが重要だ。
良好な環境を享受できる環境権は、憲法に明記されていないものの、
13条と25条に基づく権利として認められていると考える。

むしろ問題は、具体的な規制権を持たないことだ。
憲法に書くよりも、環境破壊やその疑いに対し、
住民や環境保護団体が差し止めを求めたり、行政の介入を促したり
できるように現行の環境基本法を改正すべきだ。

環境権は実効力のあるものにしてほしい。
最大の環境破壊は戦争であり、今までの平和主義が貫かれてこそ
環境権が生きる。
だから今の憲法を改正して環境権をうたえばいいと簡単には言えない。
日本人は美意識が強く、環境権は受け入れられやすいだろうが、
それを改憲のだしに使われては困る。

長い歴史の中で、政府が立派な自然の残る地域を公共事業や
開発の対象にしてきたことが思い浮かぶ。
環境基本法を改正する方が、日本の環境を守ることになると思う。

みやもと・けんいち 1930年台湾生まれ。
環境経済学の第一人者。滋賀大名誉教授、元学長。
「戦後日本公害史論」など著書多数。


以上、信濃毎日新聞 2016年9月5日 
「憲法のいま 公布70年」 新設論点「環境権」 より

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