外国人家政婦 犯罪的行為生む危険


日本農業新聞15年11月12日

外国人家政婦 犯罪的行為生む危険

コラム JA長野厚生連佐久総合病院地域ケア科 医師 色平哲郎

農村では長い間、女性に過大な負担がかかってきた。
とりわけ、乳幼児を抱える若い母親への負担は大きく、
農作業に加えて育児、家事に追われ、心身ともに消耗していた。
 
そんな状況を打開しようと奔走したのが、保健師の菊池智子さん。
長野県南牧村で保健衛生活動に従事する中で、1970年代に若妻会を組織。
女性が親しい人間関係を築きながら悩みを共有し、
解決できる社会づくりを目指した。
しかし当初は、若妻たちに声をかけても姑(しゅうとめ)の目を
気にして出てこられない。
そこで、姑世代がつくる婦人会を説得し、
若妻会の発足に賛同してもらったという。
 
現在は家電製品の普及や農作業の機械化などで幾分楽になったが、
女性に家事労働が集中する傾向は残る。
その中で2015年7月、法律が改正されて「外国人家事支援人材」
を受け入れが可能になった。
「炊事や洗濯などの家事を代行、または補助する」外国人に
来てもらおうというわけだ。
家事に追われる女性には朗報のようだが、大変なリスクをはらんでいる。
一歩間違えば、人身売買につながりかねないのだ。
 
既にシンガポールや香港、中東諸国などでは家事、育児、介護を外国人家政婦に
委ねる家庭が増えている。
これらの国々では、外国人家政婦への虐待やセクシュアルハラスメント
が社会問題になって久しい。
そもそも家庭は、家族以外の目が届かない「密室」であり、
この密室性が犯罪的行為を生むといえよう。
 
さらに、経済面でも外国人家政婦は不利な立場に置かれる可能性が高い。
日本に来る外国人労働者の多くは、仲介業者に渡航費用などを借りて来日する。
その契約関係に縛られ、強制的な労働を強いられることが懸念される。
米国国務省の人身売買報告書は、日本の外国人実習生について
「搾取を目的とした身柄の拘束」に当たりかねないと警鐘を鳴らしている。
 
男女共同参画が求められて久しい。
外国人家政婦に家事をお願いすれば、女性が社会で輝けるわけではない。
家事労働は、人の手を借りる前にわれわれ男性もやらねば、、、と反省しきりだ。

=====

inserted by FC2 system