路上生活者支援 再挑戦できる社会に


日本農業新聞15年10月1日

路上生活者支援 再挑戦できる社会に

コラム JA長野厚生連佐久総合病院地域ケア科 医師 色平哲郎

実りの秋がきました。
皆さんの地域では、お米の作柄はいかがでしょうか。
炊きたての新米はかぐわしく、美味の一語です。
 
この時期になると、一人の友人の顔が目に浮かびます。
信濃のフードバンク「山谷(やま)農場」を主宰する藤田寛さんです。
長野県南佐久郡の小海町を拠点に、賛同者から寄付された
米や野菜を首都圏で路上生活している人の支援団体などに送っています。
 
藤田さんは神奈川県相模原市の団体職員をしながら毎週、信州に通っています。
自ら支援用の農作物を栽培する傍ら、寄付を募って各地に発送。
活動を一人で十数年続けてきました。
 
当初は、信州の地元の人の賛同を得るのに苦労したそうです。
「貧困なんてアフリカとか遠い国の話だろう」と、反応が鈍かったのです。
しかし、誰もが望んで路上で暮らしているわけではない。
雇い止めや派遣切りでやむなく路上に追いやられた人が大勢いる
ことが世間に知られるにつれ、支援の輪が広がりました。
 
近年は、支援活動に共感した長野、新潟両県の農家を中心に
全国各地から年間10トンの支援米が寄せられるようになりました。
ただ、最近はなぜか米が集まらず苦労されているとのこと。
米の作柄や米の価格によって寄付の量も変わるようです。
先日、積み上げた米が全くなくなった、
空っぽの倉庫の写真が藤田さんから届きました。
 
路上で生活する人の中には、少なからず精神疾患を抱えた方もいます。
ただ、本人には病気にかかっている意識が薄いので、
なかなか路上生活から脱け出せません。
医療の手も届きにくいのが現状です。
日本が先進国である証しとは、いったん路上生活になっても、そこから脱出すること
を目指した社会からの支援の手が差し伸べられることではないでしょうか。

できれば、昨年産の古米の「玄米」を提供してほしいそうです。
もし、読者で支援をしてもよいとお考えの方がいれば、ぜひご連絡を。
「山谷農場」藤田寛、(電)090(1436)6334(午後6時以降希望)

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