少子化の流れ 日本農業新聞15年8月20日 コラム

JA長野厚生連佐久総合病院地域ケア科 医師 色平哲郎

少子化の流れは、なかなか止まらない。
社会が豊かになり、女性の高学歴化、社会進出が進んだことが背景にあるといわれているが、
世間の出産への偏見、無遠慮なまなざしも「産みにくさ」の根っこにあるのではないだろうか。 
 
こんな戯(ざ)れ歌がある。 

若く産んだら「若すぎる」 
遅く産んだら「遅すぎる」 
一人産んだら「一人だけ?」 
たくさん産んだら「やってける?」 
一人で産んだら「父親は?」 
産まなかったら「かわいそう」
 
私の周りの人たちにこの歌を紹介すると、次から次へと反応が返ってきた。 
「まったく。この通り。いろいろ言ってくる人がいるけど、おまえの人生かって」 
「次男を産んだ時、『3人目、女の子頑張らなきゃね』と言われた。ほっといてほしい」 
「出産が負担にならない程度の前向きな言葉を掛けるか、何も言わないかにしてよ」 
「かなり高齢で息子を産みました。もうボケているヒマなんかない。泣きそうです」 
「要するに日本は農耕社会だから、こんなおせっかいをするんとちゃう?」 

などなど、出産にまつわる切実な思いが続々と届いたのである。
それぞれの生き方が尊重される社会にしたいのは、誰しも同じだろう。 
 
一方で、子どもの数が減れば、将来的に社会的なつながりや支えが弱まり、
国の活力が衰えてしまう。
では、女性が子どもを産みやすい環境、安心して産める仕組みをどうつくるのか。
 
2020年東京五輪のために、バブル期の発想で2500億円以上も掛けて
巨大スタジアムを造るより、その金をお産の経済的支援に向けたらどれだけ助かることか。
昨今の政府のかじ取りは首をかしげることばかり。
原発再稼働にしろ、沖縄の基地問題にしろ、将来に多大なツケを残している。
 
少子化対策は簡単に答えは出ないが、せめて若いカップルに
「そろそろおめでた?」なんてぶしつけな質問はしないでいたいものである。

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