レイテ分校友の会

地域医療部 後期研修医 国際保健委員会 藤井麻耶

「農民とともに」254号掲載 2014年4月30日

フィリピン大学医学部マニラ校レイテ分校は、故若月名誉総長の「農村医科大学」
構想を具現化した学校であり、当院とも深く長いつながりがあります。
保健医療人材の海外流出が問題となっているフィリピンで、
独自の階段状カリキュラムを通じ、卒業生の9割以上がフィリピン全土の
農山村に定着するという成果を上げ、世界の注目を集めてきました。

私自身も大学3年生の春に、所属していたサークルでフィリピンへの
海外研修旅行を企画しました。
地域ケア科の色平医長に、レイテ分校の卒業生で第21回若月賞を受賞者でもある
スマナ・バルアWHO医務官をご紹介いただき計画し、医学生の現地実習に同行しました

密林にすむ住民たちとともに数週間住み込み、健康課題を探索し、教育を行っていく。
調べていくと、関節痛で悩む住民たちが多いことがわかり、村にあるバナナの葉と
ろうそくを材料に関節痛に効く軟膏の作り方を教える教室が開かれました。
医療資源の少ない地域で、学生手作りの教育を行い、住民たちが主体となって
健康課題への解決方法を探っていく。
同世代の医学生であった私にとって印象深い経験でした。

そのレイテ分校が2013年11月の巨大台風ハイエンで全壊し、
休校に追い込まれました。
その報せを受けて当院の国際保健委員会が事務局となり「レイテ分校友の会」が
立ち上がりました。
他人事には感じられなかった私もメンバーに加えていただき
早期の授業再開を目指すべく募金活動を開始しました。

院内外で私たちの思いに共感してくれた方々から次々に暖かい支援をいただきました。
その中で私は川西地区地域医療懇談会という住民主体で地域の地域医療を考える会
の会合にご招待ただきました。
そこで活動の話をしたところ、参加者のお一人がそれとなく空き箱にお金を入れて
くださり、会場中で支援金を集めて私に差し出してくださいました。
みなさんが地元の地域医療の心配をされているなかで、私は遠く離れたフィリピン
の医療を危惧していたにも関わらず、寛大にご支援いただけたこと、
とてもありがたく思うと同時に身の縮む思いでした。
最終的に約450万円の支援金を集めることができました。

発災直後の11月末には、救命救急センターの佐藤栄一医長が
JICA国際救急援助隊・医療チームの第3次隊としてレイテ島へ派遣されました。
12月には私と色平医師でフィリピン大学マニラ校を訪問し、
学長や分校長と再建計画について議論しました。
2014年2月には、バルア医務官や国際保健委員会委員長の座光寺医師ら
が仮移転先を訪問し、現地ニーズの確認と支援金の用途確認を行ってまいりました。
みなさまからの支援金により仮設校舎の基礎工事、配電設備、教科書などを
迅速に手配でき、被災して3ヶ月で授業再開にこぎつけることができました。
この場をお借りしてみなさまに御礼申し上げます。

フィリピンの地理的・社会的へき地で働く医療人材の育成に成功したレイテ分校から、
私たちが学ぶべきことがあるのではないでしょうか。
未曽有の大災害は大変不幸なできごとでしたが、これをきっかけに
当院とレイテ分校とのつながりが改めて深まり、
お互いの経験を共有し、学び合い、高め合う人の交流が進めばと願っています。

=====

inserted by FC2 system