94 被災地にみる医療・介護の「近未来」

日経メディカル 2014年3月14日 色平哲郎

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/blog/irohira/201403/535427.html

東日本大震災から3年が過ぎたけれど、いまだに二十数万人の人が避難生活を送る。
中でも福島は、原発事故で約8万人が避難指示を受けて、強制的な避難を強いられている。
長引く仮設生活は、避難者に過大なストレスを与える。

いわゆる「生活不活発病(廃用症候群)」は仮設住宅に蔓延している。
日ごろ、マイペースで田畑に出て、体を動かしていた高齢者が災害を機
に狭い仮設住宅に入ると、座りっぱなしの生活になり、全身の機能が一気に低下する。

新潟県中越地震の後、厚生労働省特別研究で実施した高齢者対象の
「生活機能調査」によれば、地震の影響で屋内ないしは屋外の歩行が難しくなった
との回答割合が約37%。
また、その後、地震前の機能が戻っていないとの回答が11・3%に上り、
被災高齢者の生活機能の低下が顕著だった。
 
東日本大震災後も、避難が長引くにつれて生活不活発病が深刻化し、
こうした状況には、もはや医療だけでは対応しにくくなっている。
多様な人の手が求められているのだ。
 
佐久総合病院を辞して、宮城県石巻市の仮設診療所長となった長(ちょう)純一医師は、
「医師や看護師だけで被災者をケアするのは難しい。様々な立場の人が協力することが
大切だ」と説き、介護関係者はもとより、NPOやボランティアとも連携した「チーム」で、
被災地医療を構築しつつある。
仮設住宅の診療所で、情報を共有しながら24時間、365日、患者さんを診る体制を築こうとしている。

例えば、腰痛を悪化させて立ち上がれなくなった女性に対して、
長医師の腰痛治療と並行して介護ヘルパーが身の回りのお世話に当たる。
訪問看護師が定期的な「見守り」を行い、さらには介護に当たる夫の負担
を軽減するため、リハビリの理学療法士が訪問。
これらのスタッフが、入れ替わりでかかわる。
 
もちろんマンパワーに限りがあるので、常に十分なケアというわけにはいかないだろうが、
「チーム」の意識が形成されることで、スタッフの動きは格段に良くなった様子だ。

「話を聞く」といった手法で、個々の患者ニーズの8~9割は診療所を中心とした
地域連携で応えられると長医師はみている。
一方で、大きな病院との連携も重要と力説する。
 
多様なかかわり合いで、避難者の孤立化が回避できる。
と同時に、それは迫りくる「超高齢社会」のニーズの先取りともいえようか。

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