時の顔 信濃毎日新聞 2014年3月11日

佐久総合病院の経験生かし 被災地に寄り添う医師
長純一 ちょう・じゅんいち さん

東日本大震災から3年。
「話を丁寧に聞いてくれる」と診療日を心待ちにする被災者がいる。
最大規模の仮設住宅団地に、宮城県石巻市が開いた市立病院開成仮診療所の所長を務める。

アルコール依存の人が増えていると感じる。
「自力で家や生活を再建する動きから取り残される人が出てきた」。
経済的に厳しい住民の多くが入る災害公営住宅が市内に計4千戸建つが、「ケアなし高齢者住宅」とならないか案じている。
対策の一つが、高齢化が進む中で国も掲げる「地域包括ケア」だ。
医療や保健、介護、福祉などの関係者が連携し、地域で支え合う仕組みづくりに奔走する。

農村医療で知られる県厚生連佐久総合病院(佐久市)から、約2年前に赴任した。
南佐久郡川上村では住民1人に多様な職種の専門家が関わり、医師は月1回の訪問で十分だった。
「地方に肩入れし、農村で取り組んだ経験を石巻でも生かせれば。
地元の文化を尊重しながら、時間をかけて住民と地域をつくりたい」

途上国支援や在宅医療にも取り組んできた。
活動の根底には「最も困っている人のお役に立ちたい」との思いがある。
「医師がやりたいことが医療ではない。
その人の生き方を応援し、伴走するのが医療者です」

故若月俊一・元佐久総合病院長の言葉「農民とともに」を引き合いに、「今の私の立場だと『被災者とともに』ですかね」。
照れくさそうに笑った。
首都圏の大学で福祉を教える妻と離れ単身生活。
東京都出身、47歳。

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