80 最も幸福度が高い国、デンマーク国民の本音

日経メディカルブログ 2013年1月31日 色平哲郎

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201301/528811.html


医療や福祉に携わる日本人のなかには、北欧、
なかでもデンマークへの「憧憬」が少なからずある。
私もデンマークの社会制度には敬意を払ってきた。
周囲にも、デンマーク医療の最前線を視察し、影響を受けてきた仲間が大勢いる。

デンマークは医療費が無料で、障害を負った場合にも国がしっかりとサポートする。
高齢者の医療・介護はしっかりしていて、誰もが安心してケアを受けられる。

「World Values Survey」の2008年の調査でもデンマークは「幸福度No1」。
Forbesも「デンマークが最も幸福である」と2010年に示している。
http://www.forbes.com/2010/07/14/world-happiest-countries-lifestyle-realestate
-gallup-table.html
「首位陥落」の主張も、最近目立ってきてはいるが、
http://travel.cnn.com/explorations/life/denmark-ousted-100-latest-worlds-happi
est-country-561826
いずれにせよ、高い評価の背景に、充実した医療・福祉があることは言うまでもない。

一方で、デンマークの「税金の高さ」は半端ではない。
給与の半分近くが所得税として徴収されると聞く。
それでも国民は社会保障でのリターンを実感するから、高負担を受け入れているのだ。
こう説明されてきた。

本当にそうなのだろうか。
デンマークの一般市民は「高負担?高福祉」の現状を
ホンネでどう受けとめているのか?
行き届いた社会保障給付に憧れる気持ちの一方で、ずっと知りたかった。
 
そんな疑問にズバリと応えてくれる電子書籍を見つけた。
日本滞在歴17年以上の貿易商、キム・ペーダセンさんによる「幸福度No1のレシピ」だ
。
http://mx2.jp/pub/kofukudo-no1_dk-jp.htm

ホームページの著者紹介によれば…、
キムさんは、1966年デンマークで生まれ、73年に両親とともに来日。
日本の小学校、中学校に通う。
帰国してデンマークの商業高等学校、大学、輸出専門学校などで学んで再び来日。
在日デンマーク大使館に外交官として勤務した。
その後、日本企業の取締役や、輸入販売の自営業などを務め、
現在はスウェーデンに住んで日本との貿易事業を営んでいる。

キムさんの人生経験の幅広さには舌を巻く。
幼少期からデンマークと日本を往復し、両国でカルチャーショックを受けた。
祖国デンマークでは、小さなスーパーの店長、教会でのボランティア、
タクシードライバー、福祉関連の日本語通訳などの職業に就いた。
日本でも外交官の華やかな生活から、自営業の厳しさ、離婚も経験している。

身をもって日本とデンマークの現実を受けとめている人だ。
しかも漢字検定3級の資格を持ち、スラスラと日本語で文章をつづる。
医療や福祉の「専門職」からは見えていない部分を彼は知っている。
そのキムさんの書いた本は、たいへん示唆に富んでいる。

まず、税金について、
デンマーク人は「所得税45.7%」「消費税25%」といった
高負担に「不満」を持っている。
その証拠に「脱税」への罪悪感は少なく、いろんなやり方で課税を逃れている。
人口1人当たりの平均脱税額は1万クローネ(2013年1月末のレートで約16万円)だという
。
さらに高負担の割には対価も減ってきていて、モラル崩壊も起きているらしい。

キムさんは記す。
「癌に掛った患者の治療の待ち時間が増える問題などが発生している。
海外の治療の方が進んでいるという事で海外の医療機関を希望する人も増えているが、
東洋医学を殆ど認めないデンマークのシステムでは対象とならず、
東洋風の医療を受けたい国民は海外に行き実費での治療となる」

それでもデンマークの医療・福祉の制度は、依然として世界最高水準を保っている。
人びとが高負担に不満を抱きつつも、「世界で最も幸福な国」と評価される。
その背景には、民主主義の成熟度がある。
政治家に手紙を出す。制度的不備に対しデモをして、集会を開く。
こういったことは、デンマークではごく当たり前。
お上に物申す権利が十分に行使されている。

幸せの鍵は、一般市民の政治への関わりと参加意識の高さ。
読み終えて、こう認識した。

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