78 離合集散・政党乱立の「TPP選挙」

日経メディカルブログ 2012年11月28日  色平哲郎

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201211/527949.html


「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」交渉参加の是非が、 
12月の総選挙の争点のひとつになっている。 
野田佳彦代表率いる民主党は参加に「前のめり」だ。

「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、 TPP交渉参加に反対します」。
一方の自民党は、政権公約にこう書いている。 

一見、反対しているように受けとめられるが、「前提にする限り」 という書きぶりが
いかにも官僚の作文臭くて、疑念が拭えない。 
仮に米国と交渉して、個別品目で限りなく関税撤廃に近い「0.01%」 の
数字を押しつけられても、「(ゼロではないから)勝ち取った」と言い訳する。 
そんな余地を用意したような気がする。 

歴代の自民党政権、
とりわけ安倍晋三現総裁が官房長官を務めた小泉純一郎内閣は、
米国からの「年次改革要望書」などを通じた圧力で、
「医療の市場化」を受け入れてきた。
TPPは、その流れの上にある。 

当ブログでも何度か指摘したが、
TPPに加入すれば医療への市場化圧力はより一層高まる。
国民皆保険制度そのものに、いきなり手を突っ込んでこなくても、 
米国が医薬品や医療機器の市場開放を迫るのは必至だ。 

海外から薬や最新鋭(?)の医療機器がなだれ込んできて、 
日本の医療が改善されるのなら文句はない。 
しかし、米国での薬の値段は日本と比べても、もともと高い。 

「薬価」が高い薬が増えれば、儲かるのではないか。
医療関係者の間にはこう期待する向きもあるようだが、そうはなるまい。 

日本財務省は医療費全体に枠をかけて抑制をかけている。 
薬価が上がれば、その分、人件費が圧迫される。 
医師不足の昨今、医師の人件費が削れないとなれば、
しわ寄せが看護師やコメディカルに及ぶことだろう。 

本来、一国内でほぼ完結している医療制度と、
グローバリズムによる「聖域なき自由化・商品化」とはなじまない。 

TPP反対を明確に打ち出しているのは、「共産党」「社民党」「みどりの風」など。
そして、11月28日時点でははっきりしないが、「日本未来の党」だろう。

政党が乱立し、対立軸も判然としない今回の総選挙。
離合集散は選挙後も続くだろう。
果たして国民に何をどう審判しろというのだろうか。

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