76 「戦後史の正体 1945~2012」    

日経メディカル 2012年9月28日 色平哲郎


http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/blog/irohira/201209/526911.html


 野田政権は、2020年度までの平均で名目成長率3%程度、
 実質成長率2%程度を目ざす「日本再生戦略」を掲げている。

http://www.npu.go.jp/policy/pdf/20120731/20120731.pdf

 従来の成長戦略を、震災復興と絡めて再生という言い方に変えたものだが、
 重点三分野には「グリーン(エネルギー技術のイノベーションによる
 新産業の創出や再生可能エネルギーの促進)」
 「農林漁業(6次産業化による農林漁業の活性化や就農促進)」と
 並んで「ライフ」も位置づけられている。

 ライフの内容には、医療、介護、生活支援サービス等の包括提供、
 革新的医薬品・医療機器の創出、医療システム等の海外展開などが並ぶ。
 医療者として、医療や介護を日本再生の柱の一つと
 位置づけられることは心強くもある。

 だが、その理由が「経済成長」のためだと言われると、違和感を持ってしまう。
 医療や介護を「市場化」して「儲け」を狙えば、必ずしわ寄せが
 所得の低い層に押しつけられ、格差が開く。
 小泉政権下の「聖域なき構造改革」で痛いほど分かったはずなのだが・・・。
 さながら「自民党野田派」と言うべきか。

 医療へのこうした市場化の風は、いつも太平洋の向こうから吹いてくる。

 戦後の日米関係はどのようなものだったのかと、ふと思い、
 手にとったのが「戦後史の正体 1945~2012」(孫崎享著・創元社)。
 読み始めると、目からウロコの連続だった。

 私たち日本人は敗戦を「終戦」と曖昧にして1945年8月15日を回顧しがちだ。
 しかし、日本と戦った米国や英国は同年9月2日の
 「降伏文書」への「署名」をもって、戦争が終結したとする。

 降伏文書には「日本のすべての官庁および軍は降伏を実施するため、
 連合国最高司令官の出す布告、命令、指示を守る」と明記されていた。
 そしてGHQ(連合国最高司令官総司令部)に象徴される占領軍が、
 天皇や日本国政府の「上」に位置する間接統治が始まる。

 約6年間の占領期間中に日本は米国に従属する形で
 「民主化」が行われ、その後の経済発展のレールが敷かれた。
 著者によれば、総理としてGHQに立ち向かったとされてきた吉田茂は
 「米国からの要求にすべて従う」役割をこなしたのだとか・・・。

 もちろん、異論・反論はあろう。
 サンフランシスコ講和条約が発効して今年で60年。
 尖閣諸島や竹島の問題を契機に、
 日本の独立とは何か、改めて考えさせられた。
 同時に、日本の医療制度が米国の対極にある
 ありがたさをひしひしと感じた。

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