75 高松丸亀町商店街
    

日経メディカル 2012年8月31日 色平哲郎

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201208/526542.html


 先日、香川県高松市の「高松丸亀町商店街」を訪ねた。
  http://www.kame3.jp/

 四国の商都・高松市には8つの商店街が連なり、すべて隣接している。
 その総延長は2.7キロ。商店街としては日本一長い。
 この長大なアーケード街の中に、400年の歴史を誇る
 丸亀町商店街(全長470メートル)も含まれている。

 この商店街、「まちづくり」に関心のある人の間では「超有名」な存在だ。
 高松市の商店街もバブル崩壊後の地価暴落や、
 大型ショッピングセンターの出店攻勢で、
 一時は火が消えたように寂れてしまった。
 いわゆる「シャッター通り」と化したのだ。
 かつて、丸亀町商店街では1200人が商売をしながら
 暮らしていたのだが、気がつけば、75人に減っていた。
 しかも、残ったのは全員お年寄り。

 そこから丸亀町商店街独特の再生が始まった。

 私が暮らす長野県の市町村も、過疎の波に洗われて久しい。
 少子高齢化は急加速していて、地域の医療を守るには
 医療者の確保や施設の整備にとどまらず、
 「まちづくり」自体を見直さなくてはならない段階に至っている。
 「医」は「職」や「住」「学」と密接に関連する。
 そこで今回、丸亀町商店街再生のキーパーソン、同商店街振興組合理事長の
 古川康造さんにお目にかかるため、高松へ向かった。

 古川さんは開口一番、「土地問題の解決がすべての鍵を握っている」と語った。


「商店街は土地の使い方で苦しんできました。
イベントでお店の前を借りても、うるさいと文句が出る。
市民のニーズに合わせて、新しい業種やブランドを入れようとすると
競合する店は必ず反対します。
意欲も才能もある若い人が商売をしたくても、賃料が高くて店を出せない。
地権者(地主)は、安く貸すくらいなら閉めればいいとシャッターを下ろす。
まちを活性化させたくても合意形成ができない。
後継者不足の農業、製造業なども似たような土地問題を抱えています。
それをどう解決するかで、すべてが決まります」

 では、古川さんは、どうやって解決したのだろうか。


 「地権者のオッちゃん、オバちゃんを説得して、土地の利用権(地上権)を
 それぞれ手放してもらって、半公的な『まちづくり会社』に預けてもらいました。
 そして『まちづくり会社』が再生プランを立てて、
 再開発を行い、地域を活性化しました。
 つまり、地主一人ひとりが死蔵していた土地を出してもらって
 『共有地』に変え、経営のプロが改めて商売に挑んだ。
 具体的には『60年定期借地権』を設定して地権者から土地を借り上げ、
 土地の利用を放棄してもらう代わりに、テナントの売り上げに応じた
 『地代』を地主に還元するしくみにしたんです。
 土地は所有ではなく、利用してこそ価値があるのです」

 かくして、丸亀町商店街はイタリアのミラノを想わせる華やかなエリアに変貌し、
 低層の景観に配慮した集合住宅も建てられ、住民が増えてきた。
 診療所も整備され、「讃岐弁での在宅診療」が行われていた。

 これまでまったく考えてもみなかった土地問題。
 医療機関にとっても、土地は必ずしも所有地でなくてもいいのではないか。
 長期間の定期借地権を利用して、土地を安く使う方法も検討されていい。
 問題は、そのような条件で金融機関の融資が通るかどうかであろうか・・・。

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