TPPに警鐘鳴らす医師 色平 哲郎さん(52)

     ひと 国民皆保険 守りたい 日本農業新聞 2012年3月13日

「TPPで医療難民が続出するかもしれない」。
JA長野厚生連佐久総合病院の内科医師として勤める中、
TPPの危険性に警鐘を鳴らし、時間を見つけては雑誌への投稿、
全国各地での講演などをこなす。

トレードマークは丸刈り。
TPPの講演の冒頭、「信州から来たお坊さんです」
が自己紹介の決まり文句だ。
冗談で会場を和ませ、TPPの実態を伝える。
「医師としてではなく、JA職員としてでもなく、
日本人としてTPPから国民皆保険を守りたい」
――この思いが活動の根源だ。

東京大学工学部を中退し、発展途上国20カ国以上を含め
世界各地を放浪した。
その際、国民皆保険制度がどれだけ貴重か身に染みた。
「国民が平等に、当たり前に診療を受けられ、世界に誇れる制度」。
帰国後、医師を目指し京都大学に入学。
医師免許取得後、長野県のへき地の診療所長を務めるなど、
一貫して地域医療の最前線に身を置いてきた。

地域に根差した「ローカルな視点」と世界を知る「グローバルな視点」
で医療の問題を分析。
海外に広がる人脈を生かし、TPPの情報を収集する。

「医療、介護、看護が立ち行かないと、私たちの老後はない。
国民皆保険が維持できなければ、日本人全体の老後が脅かされる」。
そして「TPP問題を機に、国民の一人一人が、
国民皆保険の大事さを考えてほしい」と心から願っている。
(尾原浩子)


いろひら・てつろう
1960年、神奈川県生まれ。
家族は妻と子ども3人。
著書は『大往生の条件』『命に値段がつく日――所得格差医療』など。

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