69 友の旅立ちと副総理来訪ー佐久総合病院の近況報告
     日経メディカル 2012年2月29日 色平哲郎
          

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201202/523849.html

春は、旅立ちと訪れの季節だ。
「変化」を最も体感できる時期でもある。

長年、「地域密着医療」と「急性期医療」の二足のわらじを履いてきた佐久総合病院。
今月、急性期医療部門を集める「佐久医療センター」の建設工事が始まった。
本院から北へ7キロ離れた佐久平に2年かけて佐久医療センターはつくられる。
広域的な医療ニーズを受けての分立だ。

「二足のわらじは、少々離れても履き続ける」
伊澤敏病院長はじめ職員は、気持ちを新たにしている。
今後は、地域密着医療の比重もますます高くなる
(関連記事:「医(いや)す者として」大震災翌年の年初に」)。
http://irohira.web.fc2.com/c62_IyasuMono.htm

そんな矢先、十数年間にわたって山間地域の医療を支えてきた同僚の
長(ちょう)純一医師(45)が佐久病院を退職し、宮城県石巻市の
約1900戸の仮設住宅が集中する「開成地区」へ赴くことになった。
東北最大規模の仮設住宅地域に設立される石巻市立病院の仮診療所長として、
移り住むというのである。
佐久病院の仲間としては、痛い! じつに痛い!
佐久はこの重大時期に、この大きな人材を、一定期間欠くことになるのだ。

長(と、いつものように敬称抜きにさせてもらう)との思い出は尽きない。
JR小海線の駅舎にある小海診療所を拠点に在宅医療を展開してきた
長のねばり強い活動には、敬服するばかりだった。
365日、24時間、訪問診療を行っていた。
訪問診療が途絶すれば、即入院という患者さんが常時10人はいる。
その穴を埋めるのは大変だろう。

しかし長は、東北の被災地を訪れ、
「このまま何もしなければ、お年寄りは劣悪な環境に置かれる」と実感し、
そこに膨大な医療ニーズがあることを知って決断した。

佐久病院を育てた故若月俊一先生は、こう語っている。
「弱い者を支えるのが人間の義務であり、
民主主義の精神であり、また協同の精神でもある」。
若月先生の最後の弟子世代の長は、この語録そのものの行動を選択した。

佐久病院の職員一同は、長の奮闘を期待し、温かく送り出そうと決めた。
このあたりが、浪花節が今も通用する佐久病院らしいところだ。
生き馬の目を抜くような医師のヘッドハンティングとか、
引き抜きといった類の話とは、全然違うのである。

去る者がいれば、逆に政府の要職に就く方にお越しいただき、
驚いたこともあった。
2月18日、岡田克也副総理が、佐久病院を訪問され、在宅医療を担当する
地域ケア科、ドクターヘリを運用する救命救急センターなどを視察した。

熱心にヒアリングされた岡田副総理は、自身のブログにこう書いておられる。

http://katsuya.weblogs.jp/blog/2012/02/%E4%BD%90%E4%B9%85%E7%B7%8F%E5%90%88%E7
%97%85%E9%99%A2%E5%9C%A8%E5%AE%85%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%A8%AA%E5%95%8F%E4%BB%8B
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%86%E7%9D%80%E5%8C%BB%E7%99%82.html

「佐久総合病院というのは、昔から地域密着型の医療で有名です。
医療関係者と看護師の皆さんが地域に溶け込み、それぞれの地域やご自宅
に足を運ぶかたちで、濃密な地域医療を行ってきました。
そしてそれが、大きな成果を上げてきました。
いま、『社会保障と税の一体改革』の中でも、そういった地域単位での
医療・介護を行っていくということに重点を置く方向性が出されています。
そういう中で、介護は訪問看護、医療は在宅医療ということを
1つの柱としているわけですが、これは佐久総合病院の取り組みなど
を参考にさせていただき、厚労省においていろいろな検討を行った結果、
出てきた方向性です」

さらに、長野県の医療費の「安さ」も副総理は強調しておられる。
ありがたいご評価をいただき、身の引き締まる思いだが、
医療費を下げるために在宅医療に力を入れてきたわけではない。
たまたまの結果なのだ。

佐久総合病院は、増大する医療需要に、医師の数が追いつかず、
多くの診療科でいまも募集中だ。
信州であるべき医療の形を実現するために、苦労を共にしてくれる医師は、
いらっしゃらないだろうか(佐久総合病院の求人情報はこちら)。
http://www.sakuhp.or.jp/ja/jobs/384/index.html

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