TPPと医療 アメリカの世界戦略の中 医療者の果たすべき役割
     院長  伊澤 敏

1989年から1990年までの間に、日米間で計5回開催された 
Structural Impediments Initiative (日米構造協議)という交渉の
場がありました。
直訳すると「構造障壁主導権」ですが、”構造協議”と訳されました。
この“協議”の目的は、アメリカの対日貿易赤字減らしです。
その延長上に、1994年から日米間で取り交わされた「年次改革要望書」
があります。

「日米構造協議」の中で、日本は国家予算を、国力の増強や産業力の強化に
つながらない公共投資にムダ遣いすることを約束させられました。
ムダ遣いに当てられた予算は、10年間の総額で630兆円と公表されています。
この予算を使って、例えば北海道の夕張市にはレジャー施設が造られ、
全国至るところに景観をだいなしにするモニュメントなどが造られました。
夕張市のムダ遣いは、その後同市が財政破綻する原因のひとつになったと言われます。

国の独立性に関わる重大な”協議”と、それに続く年次改革要望書については、
その内容はおろか、その存在すら日本国民に知らされてはきませんでした。
なぜ政府が説明してこなかったのか、なぜマス・メディアはこの問題を取り上げて
こなかったのか、背後にある政治的意図はわかりません。

昨年唐突に始まったTPP参加の是非をめぐる論議を通じて、
アメリカの世界戦略がかいま見え、同時に、日米関係の実相がどのようなものか、
以前よりもはっきりしました。
TPPの問題は農業対輸出製造業の問題にすり替えられ、
世論を分断する形で日本国内への侵入を果たそうをしています。
大震災からの復興はなかなか進みません。
足元を見れば、病院再構築に関連する課題が山積するなか、
グローバルな問題の影響も直ちに私たちの仕事や生活に及びます。

厳しい時代となりましたが、私たちは医療者として患者さんや社会のニーズに応え、
求められる役割を果たしていかなければなりません。

「弱い者を支えるのが人間の義務であり、民主主義の精神であり、
協同の精神でもある」からです。

(「農民とともに」2011年12月号掲載)

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