フィリピンの医療・看護学生支え 奨学金の縁で卒業式に
ハンセン病から回復 上田の作家 信濃毎日新聞 2011年6月29日 【レイテ島(フィリピン)28日=本社斎木政雄】 上田市保野の作家でハンセン病回復者の伊波(いは)敏男さん(68)が28日、 フィリピン・レイテ島を訪れ、フィリピン国立大学レイテ校の卒業式に出席した。 ハンセン病回復者への日本政府からの賠償金を投じ、 2003年に「伊波基金」を設立。 同校で医師や看護師、助産師を目指す学生の奨学金に活用されているため、 初めて招かれた。 同校には出身地の推薦を受けた学生が卒業後に一定期間、 地元の医療機関で働く条件で奨学金を受けられる制度がある。 伊波さんは友人の医師を通じて制度を知り、 「自分のように医療の遅れで苦しむ人を増やしたくない」と、 賠償金のうち700万円で基金を設立。 フィリピン国内の財団に管理、運用を委託し、運用益を奨学金として提供している。 この日の卒業式は同校近くの教会で開かれ、伊波基金の支援を受けている女性2人 を含む30人の卒業生が参加。 伊波さんは「(医師などとして)病気に立ち向かう皆さんのための基金です」 とあいさつした。 毎月数千円の奨学金を得て卒業したフェビー・バドールさん(22)は 「父の年収は7万円ほどで、伊波さんの基金がなければ卒業できなかった。 生涯、ご恩は忘れません」と話していた。 伊波さんは沖縄県出身。 1957年(昭和32)年、14歳でハンセン病と診断され、 岡山県の療養所などで暮らし、手術を繰り返して回復した。 2000年から妻の実家がある上田市で暮らしている。 写真キャプション:フィリピン国立大レイテ校の卒業式であいさつする伊波さん =28日、フィリピン・レイテ島 ======