59 「陸の孤島」南相馬市、医療の危機的状況続く

日経メディカル 2011年4月20日 色平哲郎

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/irohira/201104/519458.html

  福島第一原発から半径20〜30キロの「屋内退避(自主避難要請)区域」の
 南相馬市の、医療が危機的状況にある。
 入院患者の受け入れができず、地域の医療が機能不全に陥っているのだ。

 南相馬市は、地震による津波で1500人以上の方々が行方不明になった。
 その捜索や、遺体の収容もこれからというときに、原発事故のため屋内退避
 しなければならないという「生殺し」の状態におかれた。
 7万人の市民のうち、5万人がいったんは市外へ避難した。
 「風評」で物資が届けられなくなり、南相馬は「陸の孤島」と化した
 (関連記事:2011. 3. 17「南相馬に支援物資を!」)。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/blog/irohira/201103/518951.html

 旧知の桜井勝延市長は、朝日新聞の3月25日付のインタビューで
 以下のように述べている。

 「一番望みたいのは、東電も国も県も今、
 何が起きているのかを我々が瞬時に判断できるような情報を
 送り続けていただきたい。東電だけでなく、国や県から
 何の情報もなかった。 我々の現場で何が起きているかを
 職員を張りつかせて発信し、対応策を決めてほしい。
 それが最低限の責任の取り方だと思います」

 その後、さまざまな団体や自治体の支援もあり、
 物資はかなり入るようになった。
 市外に避難した人たちも「自主避難要請」にかまわず、
 続々と戻り、現在は3万5千人程度が暮らしているようだ。

 以下は昨日(4月19日)、友人から届いた最新事情である。

 「他の被災地と大きく異なっているのは、
 組織だったボランティア団体が一切入っておらず、
 全て櫻井市長のメッセージを見たという、全国から駈けつけた
 個人ボランティアばかりだったということ。若い方が多い。
 ボランティアの統括担当者も都内在住の若者。感動です。
 多くの人が粉塵舞う中、遺留物の洗浄、瓦礫の撤去などに従事しています」

 そして人が戻るにつれて、
 当然、医療ニーズも高まってくる。
 ところが、政府がこの区域での長期入院の受け入れなどを
 制限しているために、医療が崩壊状態なのだという。
 一難去って、また一難か。

 4月19日付の朝日新聞によれば、
 南相馬市原町区の拠点病院・渡辺病院は、
 震災後の3月15日から外来診療を停止し、
 国の指示で入院患者を避難させ終わった同19日から休業に入った。
 その後、4月4日から5人の医師でシフトを組み、
 簡単な検査と診察だけは再開した。
 1日平均130人の患者が訪れている。

 しかし今後は、原発事故の長期化もあって原町区は
 「緊急時避難準備区域」に指定される可能性が高いといわれる。
 指定されれば、入院患者を受け入れられない状態が続く。
 これまで、南相馬市の入院患者は、隣の相馬市の
 2つの病院に搬送されることが多かった。
 しかしいずれも、9割近くのベッドが埋まっており、
 これ以上の患者の受け入れはできない。 

 渡辺病院理事長の渡辺泰章氏は、
 「入院しての治療ができないのはまともな医療行為ができないということ。
 地域医療は崩壊している。緊急時避難準備区域から外してもらいたい」
 と訴えている。

 文部科学省の調査では、同じ原町区にある大町病院付近の
 放射線量は、毎時0.3マイクロシーベルトで、
 原発から60キロ離れた福島県庁付近
 (毎時1.2マイクロシーベルト)よりも低いそうだ。
 政府の曖昧な判断が、南相馬の人びとを困惑させ続けている。

=======
inserted by FC2 system