「院長室の窓から 」 未曽有の大震災  復興活動 力合せて

JA長野厚生連 佐久総合病院 院長 伊澤敏

日本農業新聞 2011年4月7日 連載第一回(隔週)


佐久総合病院2階にある院長室の窓からは八ヶ岳が見える。
この時期の八ヶ岳は頂に白く雪が残る。
あいにく今日は曇天。
白く輝く峰は雲に覆われている。

佐久病院に来てから25年がたつ。
現在も精神科と心療内科の外来診療を続けているが、
実態はこれといった専門の無い、佐久病院のよろず屋である。

4月、希望に胸を膨らませる季節のはずが、
今年は先月から続く重苦しさを抱えたまま新年度を迎えることになった。

3月11日午後2時46分、私は院長室で、机に向かっていた。
かすかな揺れを感じた後、ややあって、ゆっくりとした大きい揺れが来た。
建物がミシミシときしんだ。
不気味に続く長い揺れであった。
あまり近くはない所で、とんでもないことが起きている。
胸騒ぎを抑えながら、院内の防災センターに向かった。

大災害が起こると、当院のような災害拠点病院には、
直ちに災害派遣医療チーム(DMAT)の待機要請が来る。
地震は午後2時46分、待機要請は午後3時12分に来た。
そして午後4時8分の出動要請。

午後4時17分、災害救援の訓練を受けたDMATの精鋭5人が、
要請のあった福島県に向けて飛び出して行った。
出動したDMATは医師2人、看護師2人、事務職員1人からなる。

未曽有の大地震と大津波は容赦なく人々の命を奪い、生活を破壊した。
被災された方の恐怖、悲しみ、不安を思うと、言葉が無い。
犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げる。
病院は、国を挙げての復興に、これまで同様、
組織的な支援活動を継続する方針でいる。

春とはいえ、被災地は寒い。
被災者に思いをはせ、復興活動に共に力を合わせたい。

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