少子高齢社会に農協は何ができるのか(盛岡正博)

盛岡長野厚生連理事長が講演

農業協同組合新聞 2011年2月28日

JA全中は2月16、17日の両日東京で「くらしの活動関係担当部課長会議」
を開催したが、会議終了後の17日にJA長野厚生連の盛岡正博理事長が
「JAにおける保健・医療・介護の役割―住民とともに考える―」をテーマに講演した。


この講演で盛岡理事長は、日本の社会は空前の少子高齢社会にあること、
そして「景気が良くなることはない。いまがいい景気だと思う」ことから出発し、
最悪のシナリオを設定して「最悪でもこれだけ残る」と考えた方がよい。
「もし良くなったら、、、」というような発想をせず、
足元の現実を見据えて考えることの重要性を強調した。

そのうえで、高齢社会の受け皿としてJAに何ができるのかが研究されていないと
指摘した。
それはJAと中央会などに距離があり、「協同の作業」をしておらず、
「効率病に罹って」帳尻を合わせるような発想から抜け出せていないからで、
「何のために組合員サービスをするのかという原点に戻る」必要があるのではないか。
厚生連活動が進んでいる長野県でも、県全体としてはまだ「心が一つになっている」
とはいえないと、厳しい評価を語った。

唯一、心が一つになっているとすれば、佐久病院を中心とした南佐久地域で、
それは「農協、行政、厚生連病院の人たちの意識の距離が近い」からだと語った。

高齢者の一人暮らしが増えているが、多くの高齢者は
「未来に明るい希望を持っていない」。
その人たちにJAが何をできるのか。
そのいくつかのメニューは、行政と農協と厚生連が「コラボしている南佐久」
にあるが、一番大事なことは「人であり人間関係」にあり、そこに
「喜びを持って働ける人がいなければ、
どのようなメニューもうまくいくことはない」ことも指摘した。

そして「医療も介護もその地域の文化」だから、
「長野で成功したからといって、他の地域でも成功するわけではない。
その地域で介護をする人、とくに女性の意識を変え、
どうすることがいいのか一緒の活動をするかが大事だ。

これからのJAの地域づくりは「介護環境をどうするか」にかかっており、
それは多額の費用をかけずに「都会に出ている利用者の子どもたちが、
月1万円とか2万円補助したらケアできる」という発想で考え、
そういう施設での介護から出発すればいいとも。

盛岡理事長の話は、長野県や佐久病院を中心とした
南佐久地域での厚生連の活動をベースにした具体的で示唆に富むものだった。
全国的には医療や介護についての取り組みは一様ではないが、
今後の取り組みを考えるための多くのヒントがあったのではないだろうか。

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