TPP参加は「構造破壊」をもたらす

私はこう考える─色平哲郎(いろひら・JA長野厚生連佐久総合病院医長)

「日本医事新報」 2011年3月5日

●「乗り遅れるな」の大合唱

ニュージーランドでビルが崩壊した悲劇のニュースを聞いて、
「TPP先進国」の建築基準は一体どうなっているのだろうと
素朴に疑問を感じた。

日本国内では「TPPに乗り遅れるな」との大合唱がなされる一方、
24分野に及ぶTPP交渉の作業部会の内実はいまだ秘密にされている。

大手メディア5紙は一致して“GO GO”とばかり元旦の社説で喧伝、
肝心の中身がほとんど報道されない中、海外市民情報が翻訳されて、
交渉の実態が少しずつ明らかになってきた。


●外資にフリーハンドを与える

TPPは国内法を上回る協定で、外資にフリーハンドを与えるものである。
外資に「不利益」「不公正」「不自由」とみなされる「規制」
はことごとく撤廃させられることだろう。

食の安全基準や建築基準の後退、「国民皆保険」の崩壊、
医薬品・医療機器、郵政などの貯蓄、そして教育分野のルールが大変貌し、
地域格差はさらに拡大する。
山村の水源が外資に買われるなどほんの序の口で、広い分野にわたって
「構造改革」というより「構造破壊」がもたらされる。

多文化共生社会を目指すグローバル市民の動きと逆行する「構造的暴力」なのだ。


●なぜ今TPPなのか

公務員の半分は英語を話す人、労働者の半数は東南アジアの人…
そんな話が冗談とばかりは言い切れない「トロイの木馬」。
国家改造、国家連合につながりかねない「外国からの贈り物」。
それがTPPであり、ぜひ慎重に検討していただきたい。

TPPは最終的に一般の国民の暮らしに重大な影響をもたらすことが確実であって、
実は農業の問題というより、とりわけ都市近郊に暮らす人々の「老後の問題」である。
なぜ今TPPなのか、首相はきちんと説明する必要がある。

JA中央会会長は、日医会長と連携し、統一地方選後に予想される
TPP国民投票に備え、ぜひとも「救国国民運動」をご展開いただきたい。

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