TPP失速感
政府が推進シンポ 説明歯切れ悪く

民主反対派も集会 外資懸念で勢い

朝日新聞 2011年2月27日

環太平洋経済連携協定(TPP)への参加をめぐり、
菅政権内の機運が急速にしぼんでいる。
政府は26日、市民向けのシンポジウム「開国フォーラム」を開いたが、
あいまいな説明に終始。
反対派の民主党議員が、この日に集会をぶつけるなど、
看板政策の失速が鮮明になってきた。


政府はTPP交渉に入るかどうかを6月に判断する。
開国フォーラムは、交渉参加に向けた世論を盛り上げるのが狙いで、
3月下旬まで全国9都市で開く。
この日、さいたま市で開いた会合は、その1回目。

会合の冒頭、玄葉光一郎国家戦略相は「アジア太平洋の活力を取り込むのが、
日本の経済発展に不可欠だ」とあいさつした。
政府が選んだ学者や経済人などパネリスト5人のうち、
4人は「開国」に理解を示す人たち。
TPP参加は「日本経済再生の契機になる」「(関税がなくなり)
質のいいものがリーズナブルに買えるようになる」などと主張した。

だが、賛成派の勢いがあったのはここまで。
一般参加者との質疑で、「農業以外でどういう影響があるのか」
「中国や韓国が入らないTPPに参加して、アジアの成長を取り込めるのか」
などと問われると、政府側の歯切れは途端に悪くなった。
玄葉氏は「参加するかどうかは、まだ分らない。
まだ交渉参加の前段階なので、本物の情報が得にくい」と、
明確に答えることができなかった。

昨年11月に閣議決定した政府の経済連携についての基本方針では、
交渉参加の明記を見送り、判断のための「情報収集」にとどめた。
だが、方針が定まらない国に、詳細な交渉の中身が入ってくるわけもなく、
判断材料が不足。
国内の農業対策の方向性も定まらない。

玄葉氏は、関税の原則撤廃をめざすTPPではなく、
例外品目を設けやすい二国間の経済連携協定(EPA)だけを進めるのも
「ひとつの考え方かもしれない」と発言。
TPP参加は「歴史の必然」といっていた海江田万里経済産業相も最近、
農林水産省にゲタを預けるような発言をするようになった。

推進派が失速する一方、勢いを増しているのが反対派。
民主党の山田正彦前農水相らが中心となって、この日、甲府市で
「TPPを考える国民会議」の対話集会を開催。
農業団体にとどまらず、TPPにともなう規制緩和で医療分野に
外資が参入することを懸念する日本医師会や日本歯科医師会など
にも声をかけ、約150人が参加した。
非関税分野の関係者も巻き込んで反対の輪を広げようというのがねらいだ。

山田氏は「(TPPは)国民投票にかける必要があるぐらい
国の形が変わる話だ」と強調。
民主党や国民新党、社民党内にはTPPに慎重な議員が
「180人いる」と、推進派を牽制。
開国フォーラムに対抗して、全国で草の根的に集会を開いていくという。

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