竹内好の現代的意義は

生誕100年 都内で記念の集い

「抵抗するアジア」考えるとき

信濃毎日新聞 10年10月6日 文化欄


佐久市(旧臼田町)生まれの中国文学者、竹内好(よしみ、1910?77年)
の生誕100年を記念する集いが今月2日、東京都中野区で開かれた。

竹内と接点のあった人びとの証言や文献を収集する「竹内好を記録する会」
の主催で、約70人が参加。

著作の朗読のほか、ゆかりの編集者らが、西洋近代とそれを後追いする
近代日本のあり方を問う多くの論考を残した竹内の思想の現代的意義
や人柄について語り合った。


60?70年代、勁草書房の編集者として竹内を担当した田辺貞夫さん(75)
=東京都=は、近年、ドイツや中国、日本国内で相次いで、
竹内の思想を再評価するシンポジウムが開かれていることなどに触れ、
「西洋化/近代化が行きつくところまで来てしまったことの表れではないか」
と指摘。

西洋近代への抵抗によってアジアはアジアであり得ると考えた竹内の著作から、
「『抵抗するアジア』とは何かを今考えなくてはいけない」と語った。


合同出版の元編集長で、竹内と、哲学者鶴見俊輔さんら知識人15人との対談集
「状況的」(70年刊)を編集した野田祐次さん(73)=神奈川県=は、
対談相手それぞれに、前書きを書いてほしいと依頼すると原稿が
すぐに集まったことを紹介。

野田さんは「竹内さんの人徳、信頼の高さを実感した」という。

また、竹内は「無口で、存在自体に重苦しさを感じさせた」としつつ、
「まいったまいったと言いながら、坊主頭をハンカチでふいたりして周囲に
重苦しさを感じさせないように努力する人でもあった」と述べた。


記録する会は、近年、竹内の思想が再評価されるなかで、長女の本多裕子さん
(60)=千葉県=が呼び掛け、2008年12月に発足。

かつて竹内が主催した「中国の会」「魯迅友の会」の元会員らが中心となって、
関係者への聞き書きや竹内について触れた文献の発掘を続けている。

記録する会ホームページ(http://takeuchiyoshimi.holy.jp/)で、
竹内の著作の一部や発掘した関連文献を順次掲載している。


写真キャプション:生誕100年の節目に竹内好の思想の現代的意義や
その人柄を振り返った集い=東京/中野サンプラザ

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