総額640億円 再構築事業がめじろ押し

佐久総合病院、小諸厚生総合病院、北信総合病院など 
(Japan Medicine 2010年 09月 13日)

 JA長野厚生連の病院群では、施設の老朽化と地域ニーズの変化に対応するため再構
築事業がめじろ押しとなっている。盛岡正博代表理事理事長は「医療をより身近に、福
祉は暮らしの場所で保証するという考えを基本に運営してきた」と事業を推し進めてい
る。

(中略)

Interview/JA長野厚生連・盛岡正博代表理事理事長 
「身を削って獲た黒字」 

 JA長野厚生連では老朽化した各地の病院の再構築を急ピッチで進めている。地域経
済は依然厳しい環境に置かれているが、盛岡正博代表理事理事長は「余力のあるうちに
頑張って、地域の住民・職員の生活と生命を守る病院をつくる」と意気込む。多数の大
型事業を抱える盛岡氏に、これからの事業展望を聞いた。

―JA長野厚生連の病院が目指すものは。

盛岡氏 全国の厚生連病院は農民の厚生事業として存在する病院です。大都市部にはほ
とんどなく、7割以上が人口10万人以下の地域に開設されています。国全体として人口
のピークが過ぎ、地域では地域力の低下が目立つ中で、病院の役割を考えることが重要
です。

 それぞれの病院には、保健予防活動や医療活動などといった病院本来の役割がありま
すが、これに勝るとも劣らない役割が「雇用」です。病院は地域最大の雇用機関でもあ
るので、この両面を維持することが経営上の大前提となります。実際にJA長野厚生連
の職員の平均勤続年数は11年と民間医療機関などに比べて長く、病院は職員にとって人
生を送る大事な生活の場所となっています。

―現在の経営状況について。

盛岡氏 現在、われわれの年間総収入は約830億円になります。活動を支える資本金82
億円は農協組合員から無利子無担保で出資していただいたものです。全国の厚生連の中
でも最大で、大きな支えとなっています。これが故・若月俊一先生が「農民とともに」
と語られた実態です。農民とは地域の住民そのものです。地域の支えでできた病院です
から、赤字を出さないように、そしてより住民の思いに応えられるように日々活動しな
ければなりません。

 地域の住民が求めることを病院として応えた結果として、赤字になるのであれば、政
策に問題がある。JA長野厚生連では当初から労働組合が病院経営に参加しています。
私たちはこの10年間というもの、労使の話し合いによって職員の賞与を削ってまで赤字
にならないように努めてきました。このままでは自己犠牲になりそうなところは政策と
してやるべきであり、現状無視は困ります。高齢者が増えれば必要とされる医療費が増
えるのは当たり前です。無駄を総点検しながら有効に使うよう精いっぱい努力すること
が大事です。

●小海線沿線をメディカル・バレーに

―佐久は「地域医療のメッカ」と言われることがあります。

盛岡氏 私はそうは思っていません。医療は地域に暮らす人の生活・生命を支えるもの
で、医療が主役ではない。若月先生が言っておられたように、医療は本来「地域医療」
であるべきです。しかし今「地域医療」という言葉を使うことは、むしろ逆説的に医療
が地域の医療になっていないことになります。

 地域のニーズに応えることが医療の姿です。それを若月先生は「農民とともに」と言
われた。私は「より身近に」と言っていますが、地域のニーズに合った医療機関であり
、また地域以外からも患者が受診する、キラリと輝く病院にしたいという思いを持って
います。

 地域の医療ということでは、保健予防活動・医療活動・福祉活動が連続し、あるいは
相互につながっていることが必要です。分化して単独でやってしまったら、住民は全人
的に接してもらえず不幸になります。またコストもより多くかかります。さまざまな問
題が出ていますが、日本は戦後の社会のつくり方が不確かだったと思います。

―病院と街づくりについて。

盛岡氏 人々が安心して暮らすには病院が欠かせません。集落や街が存在するには、病
院があることが前提です。私は「メディカル・バレー」と呼んでいますが、これまでも
JR小海線に乗りさえすれば病院に行けるように、病院をつくってきました。

 今度の新病院(基幹医療センター)は工業団地内に建てます。人が集まれば産業が興
ります。医療・福祉の現場と科学ができる人、技術開発ができる人が接触することで新
しい価値観が生まれるだろうと期待しています。
(写真:盛岡氏)
 
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