二十一世紀前半の日本社会に於ける最大課題とは?

 色平哲郎

代議士には世界一の高齢社会に於ける「住宅建築」と「医療・介護」、
この両領域を横断的につなげる政策提言を期待したい。

ここに国民生活上の大きなニーズが潜在するからだ。

都道府県別高齢者数の統計をみると、2002年から2015年の
高齢者増加率は一位埼玉県77・4%、二位千葉県68・3%、三位神奈川県60・7%と東京
に隣接する三県が飛びぬけて高い。

これを私は「三県問題」と命名したが、高齢者の急増は「終の棲家」
をどのように確保するかという難題を突きつけてくる。

ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏は、高度成長期に建設された都市近郊のニュータ
ウン、団地住民の高齢化と建物の老朽化、この両者を「ふたつの老い」
と呼んで、いち早くこの問題に警鐘を鳴らしてきた。

山岡氏と対談した折、賃貸、分譲の違いはあれ、低成長時代に住環境を
維持安定的に整えていくには従来型のスクラップ&ビルドでなく、
味わい深い古建物をうまく再生しながら医療・介護のニーズを満たす、
そんな方向にシフトすべき、との考え方で意気投合した。

これまでも高齢者向け賃貸住宅の制度などはあったが、
補助金による新築が主体で「景気浮揚策」と抱きあわせだった。

そして補助金が切れると施設には閑古鳥、
いったい誰のための住宅政策か。

住宅は人間の「生存権」にかかわる重大テーマである。

今後「ケアつき住宅」さらには「ケアつきコミューニティー」
が待望されるであろうことは論をまたない。

大切なことは、壊して建てるのでなく、今あるものを活用し、
改修や改築の方途を探りつつ、医療・介護者のマンパワー、つまり
ヒューマンウェアをどのように育成配分するかであろう。

国交省と厚労省、あるいは文科省と農水省などの壁をぶち抜いて、
取り組むべき課題は山積している。

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色平哲郎(いろひら てつろう)
 1960年横浜市生まれ。1978年東京大学入学、1990年京都大学卒。内科
医。
 1998年から10年間、長野県南相木(みなみあいき)村国保直営診療所長。
 08年春からJA長野厚生連・佐久総合病院地域ケア科医師。
 京都大学医学研究科非常勤講師。

 【略歴】
 医学教育や国際保健活動に関わる一方で、一般内科医として訪問診療・在宅ケアを
担当
 する。
 外国人HIV感染者・発症者への「医職住」の生活支援、帰国支援を行うNPO
「アイ
 ザック」
 の事務局長としても活動を続ける。こうした活動により1995年、タイ政府より
表彰
 を受ける。
 現在は、通算12年間の村国保診療所長としての経験を生かしながら、行政の審議
会、
 大学での講義、医療経済やメディカルリテラシーに関わる市民向け講演を担ってい
る。

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