どう書く”心の処方せん”  「往生と死への準備」で長野の色平医師招いて

浄土宗総研が講演会  地域医療と僧侶の役割  中外日報 09年2月24日

浄土宗総合研究所(石上善應所長)の「往生と死への準備」プロジェクト研究会は16日、
長野県・佐久総合病院の色平哲郎医師を招き、東京都港区芝公園・明照会館内の
同研究所会議室で「地域医療の現状と寺院僧侶の役割」と題する講演会を開催した。

講演会には石上所長、今岡達雄主任研究員、熊井康雄主任研究員、
戸松義晴専任研究員をはじめ、各研究員や研究スタッフ、
それに立正佼成会付属佼成病院の林茂一郎院長らが出席。

色平医師は東大理科一類に入学したが、その後アジア各地を放浪。
再び京大医学部に入学して医師となり、長野県南牧村野辺山へき地診療所長、
南相木村診療所長を経て、現在は佐久総合病院に勤務。
著書に『大往生の条件』などがある。

はじめにNHKが色平医師を中心に地域医療を目指す医学生を
取り上げた番組「ズームアップ信州」を視聴。

この後の講演で色平医師は、信州の山村に十数年在住し、老人医療の現場を
つぶさに見てきた体験から、「お年寄りの患者は豊富な人生経験と豊かな暮らしの
智慧を持った有為の人ばかりで”高貴”高齢者と呼びたい。
すべてのお年寄りは素敵な人(家族)と素敵な場所(田舎)で暮らし続けたい
との希望を持っており、これには医療行為(入院)よりケアの方が大切」と強調、
日常を支えている家族、家庭を訪問して細やかな相談に乗るケアマネジャー、
そして保健師たちの役割を高く評価した。

さらに「医師は人間関係のプロでなければならない」
「白衣を着てしまってからでは本当の医療は学べない」
「学生時代にこそ、エリート意識を捨て、本物の医療とは何かを知るべきだ」と続けた。

出席者との質疑応答では「田舎では駐在さんと僧侶、教師、そして医師が
”稀れ人”と言われている。
これらの方は広い視野を持ち、しかも低い視点から考えるという気づきが大切。
特に僧侶の方々にはどうして僧侶になったのか、そして何を目指して歩んでいるのか
を絶えず問い求めていただきたい」と主張。

さらに、「現在、医療の総支出は30兆円だが、治療ではなく、介護やリハビリに
現在の倍の補助をすれば、結局、日本全体の医療費は安上がりになる」と述べ、
「いずれにせよ、長寿社会では医師も僧侶も”みとり”の問題が最後に残る。
これはいかに医学が進歩しても解決しない。
お互いに心の処方せんをどう書くかが問われているのではないか」と結んだ。

次回の3月31日にはハーバービュー・ワシントン大学総合病院のスピリチュアルケア
科
のジュリー・ハナダ部長の講演会を予定。

写真キャプション ”気づき”の大切さを強調した色平医師

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