「斜面」 信濃毎日新聞 08年12月11日 1面コラム

「なにかのご縁ですね」。
先月末、長野市の善光寺にボシュ・バルアさん
を案内するとこんな言葉が返ってきた。
バングラデシュに代々続く仏教徒の家に生まれ、
今は米国に暮らす科学者である。
日本に留学経験もある親日家だ
◆一族の祖先は、十三世紀ころにインドから
仏典とともに仏教を伝えたとされる。
バングラデシュのチッタゴン市郊外で、
さまざまな社会活動を続けてきた。
身寄りない子どもたちが暮らす
「アグラサーラ孤児院」も運営している
◆開設のきっかけは、一九四三年の大飢饉(ききん)だった。
三百万人ともいわれる餓死者が出た未曾有の災害に、
ときの大僧正が孤児たちと寝食をともにしたのが始まりである。
イスラム教徒が大半を占める同国では、仏教徒は1%以下の少数派だ
◆資金集めにも苦労が多い。
ボシュさんの弟が後を継いで支援を募ってきたものの、
昨年急逝してからは財政難が深刻になった。
施設に暮らす三百人の子どもたちの食費もままならない現実に、
ボシュさんは職を辞して再建に身を投じる決意をしたという
◆「アイデアや力をいただきたい」。
日本の友人たちがアグラサーラ協力基金をつくり、
ホームページを立ち上げた。
今回の来日も、理解を広げたいとの思いからだ。
ボシュさんと会った善光寺玄証院の福島貴和住職は、
「慈悲の実践に大変感銘を受けた」と話す。
仏教を通じた幅広い交流にも期待したい。
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