南相木村実習 感想 2006年夏


T大学医学部医学科3年

色平先生の書かれた本や記事に目を通し、どんな先生なのかと期待しながら、南相木に
向かいました。予想をはるかに超えるバイタリティと知識を感じ、直接会いにいってよ
かったなあと思いました。三人とも、「行ってよかった」という思いだったので、今回
の実習を計画した甲斐がありました。

「村の生活を見る」というのが、今回の大きなテーマだったのではと思います。村社会
というのは、自分の育った村、交流をもたせてもらっている小町を見てきて、わかって
いるものと思っていましたが、今回、それらの村を外から客観的にみることができまし
た。南相木は村のしきたりが厳しい村であることや、先生やちづさん、ひでさん、峰尾
さんたちの「村社会」への意見を通して、実家や小町を見ると、「なるほど、確かに」
ということが多かったです。実家の村では、生まれてからずっと内側からしか見れてい
なく、当然なこととして見ていたので、外から見て初めて理解できたところがありまし
た。小町に関しても、先輩たちがつくられた関係に混ぜてもらうということだったので
、ふと思うと、村のしきたりを踏まずに交流していたのでは、と思ったりします。あま
りにしきたりを考えると入りづらくなりますが、よく村社会を観察することは、これか
ら将来地域医療、海外医療をやっていくうえで大事かと思います。峰尾さんが言われた
「始めに医師がもっているのは、偽物の市民権だ」という言葉は、本当の信頼関係を結
ぶうえで、まず気づかなければいけないものと思います。

先生の医療、社会、経済、国際関係など、膨大な知識には驚きました。三人で「色平先
生が高校の社会の先生だったら、医学部目指さなかったかも」と笑っていました。今ま
で、経済や法律には興味が出ませんでしたが、先生の話を聞き、興味が出てきて、また
視野を広げ、様々な目線から物事を見るということができるようになったと思います。
自分のしたい医療(例えば地域医療など)をするためにも、そしてその村を良くするた
めにも経済や法律に目を向けないといけないと思います。また歴史を知ることなどで社
会の話ができるということは、コミュニケーション能力を高めるためにも、患者さんを
知るためにも必要と思います。

以前大学病院で、早期体験として、患者さんと話す機会があったのですが、何を話せば
いいのか、病気の話しか頭の中に浮かばなかったことがありました。結局、患者さんと
は「病気」ということしか共通点がなかったわけです。またポリクリなどで患者さんと
接する機会がありますが、その時、患者さんの住んでいる地域の話などができれば、親
近感も感じてもらえるかもしれません。しかし、国際関係や社会情勢についての自分の
知識不足を感じました。フィリピンの研修でも、このままではいけないと思い、メンバ
ーにも刺激になるように励んでいきたいと思います。

先生の「地域医療は医療の一分野ではなく、地域の一役割」という言葉は、医学部に入
って医学ばかり学ぶ自分達には、あっと思わせる一言でした。仕方ないことかもしれま
せんが、どうしても物事を医療から見ていました。その見方も必要、しかし、それだけ
ではなく、複数の目を持つことは、将来医療をするためだけでなく、自分が社会の中で
生きていくうえで大事かと思います。
 ちづさんや、ひでさん、峰尾さんなどたくさんの方に大変お世話になりました。特に
ちづさんには、3日もお世話になり、米子に帰ったあとも、「元気しているかな〜、学
生が帰ってまた一人だから寂しくないかな」と思いました。畑で出会い、酒を飲み、百
人一首をして、さまざま思い出をつくりました。しかしふと思うのが、もし病院のベッ
ドで寝ているちづさんと出会っていたら、どうだったかなと思います。はたしてあのよ
うな関係が気づけたかなと。たった三日でしたが、ちづさんの生活、人生を知るという
ことで、人との接し方、その人への感情が変わるものだなと思いました。話に病気のこ
としか浮かばなかったあの大学病院のおばあちゃんも、その人の生活、人生を垣間見れ
ていたら、なにか変わったのかもしれません。病院では、看護師より遠い存在の医師。
いい関係をつくる方法はまだまだあるのでは、と思います。

「患者を人としてみよ」とありますが、それは医師側も「人」として見られなければな
りません。信頼してもらえるような人格を身につけることは大変かもしれません。しか
し、一人の人間として自分を見てもらえること、「医師のM」ではなく、「M」として
見られることは、自分にとってうれしいことではないかと思います。そのためにも、こ
れから医師としての成長もそうですが、人間としての成長が第一かなと思います。

今回の実習では、非常に多くのことを考えられることができました。自分が成長してい
くなかで、今回は大きな経験になったのではと思います。

色平先生には、大変お世話になり、ありがとうございました。また、南相木の近くに行
ったときは、先生やちづさんのところにも顔を出せればと思います。ありがとうござい
ました。



T大学医学部医学科4年

色平先生とお話して一番感じたことは「Think globally, act locally」を体現してい
る人だな、ということです。この言葉は私がサークルの先輩から教わった言葉である。
私たちの通うT大学医学部ははっきり言って東京や大阪のような所に比べたら、かなり
田舎だ。しかし都会から離れていても変に卑屈になってその土地の事だけ考えるのでは
なく地球のこと、世界のことにも目を向けて考えていきつつ地域で行動していこうとい
う言葉である。また欲張りにも地域保健と国際保健を両方手がける私たちの「国際保健
友の会ハクナマタタ」の真理ともいえる。

南相木村は、電車も通らない深い山々に囲まれた過疎の村である。色平先生は家族とと
もに村で暮らし毎日村のお年寄りを診察し、往診をする。しかし先生の知識と興味は単
なる医学的知識にとどまらず、非常に広範囲に及んでいた。村のお年寄りの生活ぶりや
戦前の村のくらしから日本の医療経済や政治、戦前の満州の出来た理由、はては世界の
医療制度、国際紛争、国際法や今後世界のなかで日本の占めるであろう位置などなど、
いったいこの先生の頭の中には何冊の本が並んでいるのだろうと思わずにはいられなか
った。また世界中に友人を持ち、インターネットを通じ世界に自分の意見を発信し続け
ている。話を聞けば聞くほど、私たちは医学生としてだけではなく、地球に住む一市民
として自分たちが今後どう考え行動していったら良いのかを考え続けなければならない
と感じた。

確かに過去の歴史においても医療の進歩は人々の寿命を延ばす助けとなってきた。日本
においても戦前に比べれば平均寿命は驚くほど延びている。しかし、この平均寿命の延
びは医療の進歩だけでは無く、栄養の改善、公衆衛生の向上によってもたらされている
ことも忘れてはならない。平均寿命の延長は社会構造の変化の結果なのだ。平均寿命を
延ばすことだけを考えても医療技術の向上だけではその達成は不可能なのだから、まし
てや皆が考えるより良い社会の実現が医療技術の進歩だけでは達成されないのは言うま
でもない。医療は社会の一部であり、生活の一部なのだ。

私たちはこれからの医療を担うものとして少なくとも自分たちが利用する自国の医療制
度を知り、社会制度を知り、他国の医療制度を知り、社会制度を知り比較検討した上で
より良い社会、みんながhappyに暮らせる社会をどうしたら作っていけるのかを考えて
行かなければならない。医療は社会の中にあるのだから。

色平先生は私たちにいろいろな事を考えるきっかけとして、ちづさん、ひでさん、峰尾
さんに会わせてくださり、また多くのビデオや資料をみせてくださいました。特にひで
さんや峰尾さんといったマチ(日本国憲法の文化)とムラ(大日本国帝国憲法の文化)
の両方を知る方達にお会いし、お話できたことは私自身の心の中の引っかかりを解消す
る良い出会いとなった気がしています。今後は違う視点で地元の人達と向き合える気が
します。また私たちとお忙しいにもかかわらず私たちと話す時間を非常に沢山とって頂
けたことに本当に感謝しております。

帰ってきてしばらくたちますがまだまだ頭の整理がしきれていません。しかし、南相木
で受けた良い刺激を忘れる事無く当地での生活、今後の人生に生かしていきたいと思い
ます。そしてまたいつか今とは違った自分で南相木を訪れたいと思います。最後になり
ましたが、かすみさんにも私たち全員で峰尾さんのお宅まで送って頂いたり、佐久病院
まで送って頂いたりと大変お世話になりました。かすみさんにもよろしくお伝えくださ
い。本当にありがとうございました。先生の今後益々のご活躍とご健勝をお祈りしてお
ります。



T大学医学部医学科2年

私は都会育ちで村のしきたりなどを知らなかったので、無医村だった村に医療を持ち込
めば、喜ばれ歓迎されるのではないかと単純に考えており、村に来る前までは地域医療
にいいイメージを持っていた。しかし、実際に先生や村の人たちの話を聞くうちに、村
の人たちに馴染むのはそう簡単なことではないのだと知った。その点で、風の人である
色平先生が土の人である村の人たちに馴染んで風土を作り上げている南相木村は素晴ら
しく、色平先生は当然のことをしているだけだという風におっしゃっていたが、やはり
診療した次の日は電話をかけて様子を聞いたり村人との会話を大切にするなどの色平先
生の村の人々への思いやりの心と、訪問診療などの色平先生の地道な努力の結果である
と思った。

実習全体を通じて、普段話す機会の少ない世代で、村という仕組みの中で生きる方々と
交流するのは、大変興味深く、楽しい時間を過ごすことができた。また、色平先生との
ディスカッションで先生の知識の深さに圧倒され、例えば、村で医療をするには村の歴
史を知ることでより良い医療を行うことができるし、様々な分野に興味を持ち知識を広
げていくことは重要であるとわかった。そしてそれには様々な人と対話することが大切
であると思った。地域医療の内実を知るとともに、もっと学生時代を大切に過ごしたい
と痛感させられた実習だった。

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