「風林火山」

山梨日日新聞 一面コラム 12月2日掲載


せっかく入った東大を「えたいが知れない」と中退してしまう人はそういない。
人口1300人の長野県南相木村で診療所長を務める色平哲郎さん(44)は
世界を放浪した後、医者を目指し京大に入り直す。

講義はいつも最前列で聴いた。
後ろの席でざわつく学生を、立ち上がり「出ていけ」と怒鳴りつけた。
意味不明の講義を続けた教授には最終日、
「あなたは来年から講義をせんでよろしい」と申し渡した。

色平さんにとって、大学生は大人。
大人は自活しなければいけない。
しかし、働いて学費を支払い、生活していくのは苦しい。
趣味的な講義をやり過ごす余裕はなかった。

大学生になれば、自分の力で生きていかなければならない−。
著書「源流の発想」でその想いを「強迫観念だった」と打ち明ける。
新潟から東京に出た父親は、今とは逆に働いて家に仕送りをしながら夜学を終えた。

「アジアと村が教えてくれた」と題し、清里で先ごろ行ったトークでは
「若い人は旅をした方がいい。
ぶつかり合うことを恐れてはいけない。
知ることより感じることが大事。
知識や情報に頼らず、何が素晴らしいことなのかを感じて、
それを生きる座標軸にしてほしい」と呼び掛けた。

「親のお金で大学に行くことを当たり前と思っているとしたら、
それは世界の常識から非常に外れた、はずかしいことだ。」
子として親として、耳が痛かった。

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