厚労省の友人とのディスカッション


> 厚生労働省の「21世紀福祉ビジョン」では、当初、年金・医療・福祉の給付比率
> を5・4・1から5・3・2にする、とし、年金の5は動かさない建前だった
> しかし、ここへ来て、肝心の年金部分が不安定になりつつある

年金は、相当基本的なところ(積立金の徴収といったレベル)から建て直さないと、
不安定どころか破綻します。
民間会社が運用していたら、まずはあり得ない”社会のお財布”です。


> 現在の皆保険・皆年金を軸とした日本型医療システムの形成がはじまったのは、
> 第二次世界大戦中の”1940年体制”なる総動員計画の中である

> 第2次医療技術革新に於いては、診断技術の効果と治療技術との間にギャップが存
> 在する

> 日本型医療・福祉システムの基盤の上にたった戦後の医療政策が破綻に瀕している
> のは周知の事実となってきた
>
> 厚生行政も一連の医療・福祉改革を精力的に進めているが、歴史的視点の欠如から
> 時代を見通す力を欠き、
> 官僚主導による破綻の責任感がないうえに、医療・福祉のパラダイム転換を迫らせ
> ている本質を見抜くことができない

正直、事務系の人は、破綻に対して鈍感な人が多いような気がします。
実質、彼らが最終決定権を握っているのですが・・・


> 当面の問題についての対応策はたてるが、日本医療・福祉の構造的欠陥に目をつむ
> り、むしろそれを温存しようとする考え方が残っているので、
> 抜本的解決を迫られる矛盾を先送りする危険性が大きい

役所にいると、付け焼き刃的な対応策が目立ちます。
長期的な視野に立った施策立案が困難です。

役人も少し専門特化した人事配置をすれば、変わるかもしれません。
ゼネラリストかスペシャリストか、いつも議論になるところです。
そもそも、政治家が大局的な視野でリーダーシップを取ること、
それが彼らに期待されている役割では??


> しかし社会経済・企業・政治の側からは規制緩和が叫ばれている
>
> これが歴史的検証を抜きにして機械的に医療・福祉・年金の世界に持ち込まれたと
> きには、改革といっても結局は「企業化」の波に飲み込まれてしまうであろう
> 社会保障の本質をより大切にし、充実するための政策転換が要請される所以である
>
> 近年の一連の医療・福祉改革の中心は、規制緩和という名目の下での「企業化」の
> 全面化である

経産省は、とにかく規制緩和の一環で、医療福祉も自分の土俵に持ってこようとし
て、様々な攻勢をかけています。
まさに、歴史的検証抜きで「企業化」を推進している役所です。
しかし、どうも厚生省はそれに対抗していない(できていない)ような気がします。


> 医療制度の研究というと、医療関連の法律の成立史と考えられやすい
>
> 戦後に病院管理の重要性が強調されたが、一病院の管理に重点がおかれ、
> 全国の医療システムをどうとらえ、どう改革していくかという社会科学的な考察は
> 弱く、この分野の専門家も少ない

これは、日本医師会の力でしょうか??
今の私にはそれしか思い浮かびません。

「全国のシステムを捉える→医師を押さえ込む」と取られているような感じが、
医師会の新聞を見るとします。


> 最も効率のよい科学的な医療システムの立案・遂行が本来の使命であるのに、
> 効率化イコール医療費削減という方向に走り、技術自体、技術システム
> を考慮に入れた技術水準の向上、医療費の効率化をはかる視点が弱い、、、

ここはとても納得できます。
効率化は、お金を削ることだけではないはずです。

医療保険財政が逼迫しているのはよくわかりますが、
本当に削らなければいけないのでしょうか?
もちろん、技術水準の向上や医療行為の省力化をあまり考慮していると
は言えない、そんな現在の配分のままではいいとは思いませんが。

(引用・参考資料 : 「21世紀への社会保障改革」川上武・著 1997年)

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