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--朝日新聞 医学生ら、地域医療の現場で学ぶ

 

「原点が見える」 信州大の医学生ら、地域医療の現場で学ぶ /長野

       1997年08月27日 朝刊  ページ 長野    

 

 信州大学で医療や看護を学ぶ学生たちが二十七日まで、南佐久郡の町村で合宿し、地

域医療の現場を訪ねている。いずれもへき地での医療や看護、外国人労働者の健康に関

心を寄せる学生で、「夏場は高原野菜で忙しいといった地域の特色が健康にも反映して

いることが分かる」と、学内では得がたい現場体験に意欲を燃やして取り組んでいる。

  

 参加しているのは、信大のサークル地域医療研究会の会員六人と、東京の東邦大医療

短大の一人。南牧村診療所と同村の野辺山へき地診療所の医師を兼ねる色平(いろひら

)哲郎さん(三七)と、東大国際保健計画学教室の大学院生スマナ・バルアさん(四二

)の仲立ちで実現した。

 一行は南牧、川上両村の診療所や、小海町の佐久総合病院分院で医師の往診に立ち会

い、町村の保健婦に話を聞いている。さらに、川上村文化センターをはじめ地域の施設

を訪ねて、建設の狙いや住民の利用状況を尋ねている。

 二十五日は、南牧村が無医村だった二十八年前から保健婦を務めている菊池智子さん

(五二)を囲んだ。

 菊池さんは、妊娠中絶や子供の病気への対応で悩む母親のために若妻会を作り、その

後に婚前学級作りにもかかわった経験を説明した。学生たちが、時代と共に子供たちの

変わりようについて質問すると、「時代は変わっても、健康についての住民のニーズを

引き出し、行政に提言する保健婦の役割は変わらない」と語った。

 この合宿について、信大グループの医学部三年生、鈴木伸さんは「大学病院や大きな

医療施設は、学内の実習や研修医として学べるが、へき地の診療所や保健婦の働く現場

を訪ねる機会は少ない。今回の訪問で、地域の実情を理解することなく医療や看護は行

えないことも分かった」と語る。

 信大生から相談を受けた色平さんとバルアさんは、東北、九州など各地の学生の地域

医療見学を面倒みている。今年はすでに三十人を超えている。色平さんは「村に来れば

、医療でも看護でも原点がよく見える。医療協力で途上国に出たいと考えている学生た

ちも、保健婦の地域での活動は参考になるはずだ」と語っている。

  

 【写真説明】

 南牧村の保健婦、菊池智子さん(左)を囲んで話し合う学生たち=南牧村役場で

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