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    モード・バーロウ さん

      (Maude Barlow

 

   「朝日新聞」全国版 2000年8月9日朝刊「ひと」 欄

                水ビジネスに警鐘を鳴らす

 

 

二十一世紀は水資源の枯渇が深刻な問題になる。

いま、水不足に悩む人々は、二十六カ国三億人。

五十年後には六十六カ国、世界人口の実に三分の二に

及ぶといわれる。

 

「かけがえのない水が金のあるのところにばかり流れたら?」。

切実な訴えは、水をめぐるビジネスが世界規模で拡大している

ことへの懸念の表れだ。

 

カナダに十万人の会員を抱える非政府組織(NGO)

「カナダ人評議会」の共同議長。

大学卒業後、男女平等や貧困問題などの市民運動に携わってきた。

 

水に興味を持ったのは、一九八O年代半ば。

カナダから米国に大量の水を巨大タンカーで輸出する計画が持ち上がった。

生態系への影響、人々の暮らしや文化とのかかわりを考え、

「水には、ほかのモノと同じような商取引はなじまない」

と確信した。

 

自国で輸出ノーの論陣を張りながら、世界を見渡すと、

ボトル入り飲料水の貿易は年間二百億リットルを超えていた。

その一方で、第三世界では、上水道もない貧しい地域の人々が

法外な値段を払って不衛生な水を買っている。

 

水ビジネスは上下水道にも及ぶ。

民営化した欧米などでは、水質や料金値上げが問題化していると指摘する。

「電気やガスと違って水はサービスではない。

基本的人権です」。

世界の事例を調べ、「BLUE GOLD(青い黄金)」

と題する本を昨年書き上げた。

 

「一滴きたりとも」と言うつもりはない。

「貧困にあえぐ人々や干ばつ地に水を贈ることは

水の豊かなカナダや日本の責任です」と力説する。

 

七月に市民団体の招きで来日し、水問題の深刻さを訴えて回った。

信州の山里でわき水を使った水道水を口にした時のこと。

「ワンダフル! こんなおいしい水を大切にしなきゃ」。

くりっとした目がいっそう丸くなった。

 

文・写真 森 治文

 

夫は弁護士。

「私が仕事しやすいよういつも支えてくれます」。

53歳。

 

 

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