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 本の紹介

   「来世紀、紛争の火種となるのは水であろう」

 

(イスマイル・セラゲルディン世界銀行副総裁)

 

 

「従来の水資源が世界中でますます枯渇し、水質が悪化している今・・・

この急速に拡がるビジネス・チャンスを活かさない手はありません」

(USグローバル・ウォーター社の案内パンフレット)

 

私たちは、この惑星では水は尽きることなく供給され続けると考えがちである。

しかし、これは悲劇的な過ちである。

私たちが利用することのできる淡水、地球上の総水量の0.5パーセント以下

に過ぎない。

残りは海水、もしくは極地に氷として存在している。

そして淡水をしているのは、

年間4−5万立方キロメートルほどの降雨のみである。

 

全世界の水消費量は20年ごとに倍増、

つまり人口増加の2倍のスピードで増加し続けている。

国連によると、現在すでに地球上に清潔な飲み水を得られない人々が10億人いる。

もし現在の傾向が続けば、2025年には、

現時点で供給可能な水量を56パーセントも上回る水需要が生ずることになる。

 

水不足の危機が深刻化する中、各国政府は多国籍企業の圧力の下で、

水資源の商品化と大量輸送、という急進的な解決策を提唱している。

 

推進サイドは商品化と、それにともなう民営化というシステムこそ、

世界の渇水状況に対応し、水を分配する唯一の道であると主張する。

 

しかし、これまでの経験を振り返れば、開かれた市場での水売買では、

水を必要とする貧しい人々の求めに応えることはできないことが明らかである。

 

逆に、私有化された水は、代金を支払うことのできる豊かな都市部や富裕層、

または農業やハイテク産業などの水を大量に必要とする産業に運ばれていく。

 

地域の水がハイテク産業に奪われてしまった米国ニューメキシコ州の

砂漠地帯の住人のひとりの言葉を借りれば、まさに

「水はカネのあるところに向かって流れる」のである。

 

水が極度に不足している中東において、水をめぐる戦争が勃発する潜在性

が高いとの指摘は数多い。

かつてヨルダンの故フセイン国王は、こう語っている。

「イスラエルと戦争することがあるとすれば、その理由は水以外はあり得ない。

ヨルダンに供給される水資源はイスラエルの支配下にあるのだ」

 

そして、淡水の過剰な利用と取水によって、湿地やそこに生息する野生生物、

そして生物多様性そのものが破壊されている。

米国本土では湿地の50パーセントがすでに失なわれた。

米国カリフォルニア州では湿地の95パーセントがすでになくなり、

1950年に6000万であった渡り鳥や水鳥の生息数は、

今日300万にまで減少した。。。

 

 

以下、目次

第一章 迫りくる危機          水不足は「食料不足」をもたらす

第二章 グローバリゼーションの影響   あらゆるものが商品化される時代

第三章 水の民営化           水を乱用するハイテク産業

第四章 水の世界貿易          パイプライン計画 

    ボトル飲料水が巨大ビジネスに  水分野の「OPEC」カナダとアラスカ 

第五章 各国政府の怠慢         水利権の取引と買収

第六章 国際貿易・投資協定の脅威    NAFTA(北米自由貿易協定)の影響

    WTO、MAI(多国間投資協定)の脅威

第七章 水を共有するという倫理     水を保全する十の原則 

 

BLUE GOLD 〜独占される水資源

 

■モード・バーロウ [著]

■市民フォーラム2001 [翻訳・発行]

■現代企画室[発売]

■A5版120ページ 定価900円+税

 

 

以下、コメント(色平、 by IROHIRA)

 

以上は、先日信州にお招きしたカナダの女性、

モード・バーロウさんの近著 "Blue Gold" の翻訳で、

来日記念として発刊されたものです

 

ご存知のように世界銀行は95年の報告書

「水危機に直面する地球」で

「今世紀の戦争の多くは石油をめぐる争いだった。

来世紀には水をめぐる戦争になるだろう」

と予言していますが、その詳報と続報です

 

信州の山の村にあって、日本で一番長い川の最上流に暮らして

おりますので、日々「水利権」の存在を身近に感じています

 

そしてムラにあっては「水争い」の記憶は身近なものです

 

世界に200からあるという「国際河川」での上流と下流、

あるいは向こう岸とこちら側での「水争い」は

所詮他人事なのでしょうか?

 

7月18日付けの読売新聞によると、

「世界の水危機、急速に拡大」と大見出しがあり、

「国際紛争の火種に」「中国、インド 広がる旱魃」

との見出しが続きます。

そして「水の輸入大国」としての日本について、

 

「湿潤な日本は一見、水危機と無縁のようだが、実は多量の食料輸入を

通じて世界の水需要と緊密にかかわっている。

日本の穀物輸入量は年間二千八百万トンを超え世界のトップクラス。」

とし、ふたりの有識者の見解を挙げています

 

「穀物は一トンの生産に対し水資源を約千トンも消費するだけに、

穀物輸入を通しての過剰な水輸入国から転換することが必要だ」

 

「農産物輸入は現在米国から歓迎されてはいるものの、

近い将来に水不足が世界の共通問題になると、

水を買いあさる日本への批判に反転しかねない。早急な対策を」

 

 

モード・バーロウさんの講演録

「企業vs.国家: 国家・自治体から奪われる「公的」役割」

へリンクする

 

 

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