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     Q:「累積債務」とは?

A:

途上国が、先進国政府やIMF・世界銀行など国際機関から

開発援助資金として(ドル建てで)借りうけたものが、

独裁者に盗まれたり、計画がずさんでプロジェクトが失敗したり、

一次産品の価格が国際市場で暴落したり、利子率が高くなったり、

通貨が暴落したりして、返済不能に陥り、借り延べ(リスケジューリング)

を繰り返しているうちに、不良債権化したもの。

 

たとえば、タンザニアではこの20年間に通貨価値が100分の1となったので、

債務は100倍に膨れ上がった。

 

つまり、「サラ金地獄」のことである。

 

 

 

      Q:借金は返済すべきなのでは?

A:

個人が借金をした場合は、その個人が返済の努力にあたるのが「当然」である!

そして、個人や法人の場合には、破産法などで(その個人や無限有責者が

飢え死にしないように)救済方途が準備されている。

 

つまり、文明国では、「ベニスの商人」のシャイロックみたいなことは、

やろうとしてはいけないことになっている。

 

「メス牛が出せる乳の量は決まっている。

乳を搾りきったからと更に血まで搾ったら、元も子もない」

(アフリカのことわざ)

 

しかし、国には、つまり途上国の政府には、「破産」が認められていない。

 

債務国の政府が、なけなしの歳入から支出するにあたり、

貧しい(とりわけ地方の)人々向けの教育予算や保健(PHC)予算を削って、

累積債務の返済にあてることが、「当然」のこととして期待された。

 

現場の小学校教員と保健婦に支払う給料が格好の標的にされた。

子どもたちの公教育とヘルスが狙われたわけだ。

 

公共セクターを民営化しても、そうそう計画どおりに「起業」

が成功するものではないだろう。

約束された新しい雇用がだめならば、海外に出稼ぎに行くしかない。

 

今日、冷戦時代の米ソ双方からの戦略的な「特別援助金」は、

もはや期待できない。

 

公立学校が崩壊しそうになり、乏しい資源をめぐっての社会不安から

麻薬や小火器、性感染症が蔓延して、

社会的弱者である子どもが飢える事態にまでなった。

 

これは、(頻繁にくりかえされるクーデターや民主化する以前の腐敗した)

借りた側の政府ではなく、そんな恩恵に浴したこともない

(貧しい、地方の、先住民族を含む)人々の生命をもって、

債務返済が強行され続けてていることを意味する。

 

「国際金融の構造的暴力」との言葉で表現される事態である。

 

 

 

        Q:飢餓の原因は?

A:

「飢えた子どもは、政治を知らない」とのことわざがある

 

Why me? との子どものまなざしに対し、死因を本人に告げることは至難であろう。

 

なぜ自分は、こんなにいつもひもじいのか? 

 

なぜ自分は、こんなひどい病気になってしまったのか?   

 

といった Why me? Question は、不条理さに対するある種恨みに似た

感情の表出であり、先進国の病院では重篤な患者さんで見受けられるものだ。

 

 

地球の気象の変動が、世界の旱魃や洪水の原因となっていることはもちろんである。

水は多すぎても、少なすぎても災厄をもたらし、歴史的に飢餓を生んだ。

 

しかし、現代、つまりグローバリゼーションの時代の飢餓は、

明らかに人間が創り出したものである。

 

今の飢餓は「食料不足」の産物ではなく、むしろ全世界的な供給過剰構造が

一国の食料安保を崩壊させ、地場産業としての農業を破壊したことの結果である。

 

たとえば、アフリカ全域で遊牧経済が崩壊しつつある。

農業補助金をたっぷりもらったEU圏から、無関税で輸入される

牛肉や乳製品は、いずれアフリカ大陸の牧畜経済の息の根を

止めるだろう。

 

西アフリカに輸出されるEUの牛肉の量は、1984年からの

十年間で七倍に増加した。品質に劣るEUの牛肉が、

この地域で生産された牛肉の半分の値段で市場で売られ

ている。

 

サハラの農民は「自分の家畜の肉を買う人が、もはや誰もいない」

ことに悲しく気づいた時、飢えはじめた。

 

(穀物)多国籍企業によって、徹底的に介入調整される

このような供給過剰構造は、民衆の生活を支える基礎的な

食料生産分野での構造不況をもたらし、生きる基盤を失った

農民をますますの貧困に追いこんでいる。

 

さらに、グローバリゼーション時代におけるIMFと

世界銀行の現行の構造調整プログラムは、

飢餓の発生そのものと直接に、広範に関連している。

 

なぜならこのプログラムは農村、都市にかかわりなく、

世界市場体制の利害と一致しないすべての経済活動を

組織的に破壊するからである。

 

「餓死による死とは、その社会で何が合法であるかを、

極端な形で映し出している」

(アマルティア・セン「貧困とききん」岩波書店)

 

 

 

       Q:IMFは藪医者なのですか?

A:

ソマリア1981年、

ユーゴスラビア連邦1983年、

ボリビア1985年、

ルアンダ1989年、

ペルー90年8月、

ブラジル90年3月、

ロシア92年1月。

 

81年、ソマリア・シリングの切り下げは、牧畜経済の崩壊と

後の飢餓につながった。

 

83年、IMFによる「安定化」政策が引き起こしたインフレは、

後のユーゴスラビア連邦崩壊、内戦へ。

 

85年、大統領令21060号措置は年率24000%のインフレを退治したが、

ボリビアは麻薬国家へ変貌。

 

89年、コーヒー市場の崩壊は、後のルアンダ内戦と

民族虐殺の悲劇の導火線となった。

 

90年、ペルー、フジモリ大統領の「フジ・ショック」は

悪性インフレに転化。

 

90年、ブラジル、コロル大統領の「コロル計画」は

通貨クルゼイロを崩壊させた。

 

92年、IMF式「ショック療法」はルーブル建て預貯金を紙くずにし、

ロシアを第三世界化した。

…………

 

世界の大メディアによって、「民族紛争」「政情不安」と

報道された地域紛争の例である。

どこについても、ことの起こる前にはIMFが処方(!)を盛っていた。

 

 

IMFは常に、各国の通貨が「過度に切上げられている」、と主張する。

そして、構造調整借款が提供されるに先立って、前提条件としての

通貨の切下げを要求する。

 

「大幅な通貨切下げ」に伴う社会的衝撃は急激かつ冷厳であり、基本的な

食料品と必須医薬品、燃料、公共料金の価格が、一夜のうちに上がる。

 

これは国内価格の「ドル化」と呼ばれる現象である。

通貨切下げは、国内の商品価格を、世界市場の水準に相応する価格まで

上昇させることを、強く要求する方向に働くからである。

 

続いて実質所得がかなり下落し、同時にドルで計算した政府支出の規模を

かなり小さくみなすことができるようになるので、

結果として国家の税収を債務返済にまわすのがはるかに容易になる。

 

IMFは、通貨の切下げがインフレーションを誘発する、

という事実を否定している。

しかし、実際の悪性インフレの誘因は通貨の供給過剰というより、

むしろ通貨の切下げである。

なぜなら、諸物価の暴騰は一夜にして起こるのであり、

どんなに厳格な通貨供給制限措置をとったとしても、

通貨量の制限効果はゆっくりとしか効かないからである。

 

むしろこのような通貨供給の凍結は、政府の実質支出を

縮小してしまうので、公務員の実質賃金削減と公務員の

減員に取り組まざるを得ない事態に追い込まれる。

もちろん以下のごとく、逃げ道はすでにふさがれている。

実質所得を、騰貴する物価にスライドして上げることを、

IMFは事前に禁止している。

物価連動性を禁止する論理的な根拠は、

なんと(!)「インフレを抑止するため」であるという。

 

もちろん、場合によっては、通貨の切下げによって、

農・畜産物の海外輸出が短期間のうちに活性化することもある。

一次産品のドル建て価格が安くなるからである。

 

しかし、こうして発生した所得は、

農業労働者の実質賃金の下落という中で、

大規模プランテーションと貿易商社に吸収される。

そしてもし、競争関係にある他の途上国が

IMFの処方で通貨切下げを実施すれば、

(通貨の切下げ競争)もちろんこのような短期的利得は即、

無意味なものとなってしまう。

 

こんなひどい処方箋を書きまくったIMFは藪医者だよ!

 

ちゃんと「医学部」で勉強したとはとても思えない、ニセ医者だ!

 

ほとんど「悪意」さえ感じる「治療方針」だ。

 

「国際化」などという脳天気なことばは、

このご時世、日本の中だけで通用しているものだ。

 

正しくは「貧困の世界化」と呼ぶべき状態である。

 

冷静に分析するなら、

通貨切下げの諸影響は次のような変数との関連で解析する必要がある。

 

国内価格の水準 P

 

名目賃金 W     実質賃金 W/P

 

政府の名目支出 G  政府の実質支出 G/P

 

名目通貨供給量 M  実質通貨供給量 M/P

 

そして,国内価格の「ドル化」(Pの上昇)によって

次の両変数は縮小される

 

実質賃金 W/P

 

政府の実質支出 G/P

 

Mは増やすことも可能な変数だが、M/P はやはり縮小する

 

以上を言い換えると、

 

通貨切下げは通貨量(M/P)の縮小をもたらし、

政府の実質支出規模(G/P)と実質賃金(W/P)の

大幅な減少につながる・・・となる。

 

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