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          来世紀の農業像

 

                厳しい現状と食料安全保障

 

先日、スーパーマーケットに行って、びっくりした。

 

中国からの輸入ニンニクが、棚にたくさん並んでいた。

大きな立派なものが三つで百二十円。ひとつなら四十円。

なんとも安い。

隣の棚には、青森県産のニンニクが並んでいた。

見た目も大きさも同じ国産のこれは、ひとつが二百八十円だ。

実に七倍の値段差である。

 

うちの女房は、どちらのニンニクを買うのだろうか?

 

 

二倍三倍ならともかく、価格差は七倍もある。

味はどこか違うのだろうか、

残留農薬などの安全面では……

双方の売れ行きが、何とも気になった。

 

 

日本の学校や役場では、会計年度は毎年四月に始まり、翌年の三月に終わる。

しかし、コメの年度を数える「米穀年度」は毎年、前年の十一月からはじまるのだ。

 

今は二〇〇〇年十二月。

世間はいよいよ二十一世紀への入り口に立とうとしているが、

コメの世界では、そして我々の日々の食卓では、新米の登場と共に、

すでに”二〇〇一年度”が、始まっているのだ。

 

二〇〇一年度産の新米の相場は、国内価格としては、どうなのだろうか?

それはニンニクと同じように国際価格の何倍にもなるのだろうか。

 

 

農水省によると、一九九〇年に玄米1キロあたりの値段は約347円だった。

自主流通米の年間平均価格は、九九年には約282円に下がっている。

 

世界貿易機関(WTO)体制の下、

九九年四月をもって、コメ輸入の関税化は完成された。

以前あったというすべての「障壁」は、関税の金額に置き換わったのだ。

現在のコメの関税はキロあたり約351円と、ものすごい高関税であるが、

WTOが示す「原則」では、この関税は、時間経過とともに、

「決して後戻りすることなく下げつづけること」、とされ、

「逃れることのできない義務」とされている。

 

タイでの米価は、小売でキロ当たり60円程度

(中国では同じくキロ当たり27円程度)であるから、関税を足せば400円以上となる。

今のところは、輸入タイ米の国内価格は、国産のコメの二倍弱になっている。

 

「自由化」のいっそうの進展に伴って、

ニンニクに限らず農産物の輸入が大幅に増加しているという。

そして不況が長引き、コメに限らずあらゆる商品で低価格志向が強まっている。

 

担い手の減少と高齢化、遊休農地の増加の一方で、

農産物価格は総じて低迷し、時に再生産も厳しい状態であると聞く。

 

農水省の資料によると、米価は九四年からほぼ一貫して下落基調、

自主流通米の農家販売価格は九五年以来、生産コストを下回っている。

 

日本のカロリー自給率は四〇%、穀物の自給率はわずかに二七%に過ぎない。

あとをすべて輸入に頼っているこの国の、食料安全保障はいったいどこにいくのだろう

六九年に減反政策が始まるまで、九年連続して反当りのコメ収量日本一

を誇ったのは、まさにここ信州だった。

炊き立てで、程良く湯気をあげる「ミレニアム新米」を食べていたら、

来世紀のこの国の農業の姿を、思わず考えてしまった。

 

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