乳幼児の誤飲

日本の生活習慣に必然性



赤ちゃんは何でも口に入れます!

生後五ヶ月が過ぎると、誤飲(ごいん)事故が多発します。
その理由は、赤ちゃんの発達―――
つまりお子さんは日々成長しているからです。
昨日、手が届かなかったところに、今日は手が届くようになります。
事故が起きてあわてる前に、「予防」が大切です。
なぜなら誤飲事故は「防げる」からです……。

日本では、3歳未満の乳幼児期の誤飲事故の発生頻度が、世界的にみて異常に高い。
1歳未満で、アメリカの3−4倍というデータもある。
いくつかの統計によれば、日本国内で、
生後五ヶ月から一歳五ヶ月の年間発生頻度は約4パーセント、
一歳六ヶ月から三歳未満は約1パーセントであった。
現在、日本の年間出生数は約120万人であるから、
3歳未満児だけでも年間約7万人が、
誤飲のために医療機関を受診していることになろうか。

誤飲したもので一番多いのは、たばこだ。
次いで医薬品、化粧品、洗剤、殺虫剤となっている。
また、家庭で使用される頻度が高い新製品ができて、
そのサイズが乳幼児の口に入るもの、例えばボタン型電池のようなものであれば、
新しい種類の誤飲・窒息事故が発生する。


欧米では、プラスチック製の口径32ミリの円筒(窒息テスター)を保護者に配布し、
「この円筒の中に入るものは誤飲の危険性がある」と教えている。
直径32ミリ以上、とはアメリカ玩具(がんぐ)協会の、
子ども用おもちゃに関する安全基準でもある。
そしておもちゃの販売時にも紙の円筒を配布して、
「この円筒の中に入るものは、床から1メートル以上の高さに置くようにしてください」
との注意が、保護者に繰り返し勧告されるという。

日本では、畳や床の上に生活用品を置いて生活しているということがあり、
乳幼児の発達に伴って誤飲事故が発生するのは、いわば「必然」だ。

つい最近まで、誤飲事故に対しては「保護者の注意義務違反」であり、
「厳重な罰則規定があってもおかしくはない」
と医療関係者は考えがちだった。

そして「誤飲した子どもには、苦しい思いを味わわせるが、
保護者にもその処置を目(ま)の当たりにさせることによって、
二度と誤飲事故が起こらないように、胃洗浄を施行すべきである」
という対応さえあった。


しかし最近は、変化の兆しが現れつつある。
国内の乳幼児の誤飲の年間発生頻度は、この十数年間まったく変化がない。
地域差もない。
世界的に見ても、日本だけが相変わらず異常に高い発生率であり続けている。
このことは、前記のような「対応」が無効であったことを示しているだろう。

生後五ヶ月を過ぎれば、乳児は何にでも手を伸ばすようになる。
触れたものは握ってみる、そして口にもっていく。
これは正常な「発達」だ。
乳児の口に入る大きさの異物が手の届くところにあれば、当然の事として誤飲が発生す
る。

異物を飲んだ時の安全な吐かせ方、あるいは、
吐かせてはいけない状況などを伝えるとともに、
生後四ヶ月になったら、直径32ミリ以下のものは、
前もって床から届かない高い位置に置くようにするなどの情報伝達――
これ以外に誤飲防止の有効な方法はないように思われるのだが、
いかがであろうか。

各所の保健婦さん方のご努力に期待申し上げたい。

inserted by FC2 system