「私の夫は医者」
医師 色平(いろひら)哲郎の妻 かすみ 1995年
私達が結婚したころ、結婚するなら”三高”の人という言葉がはやりました。
私達の場合”三高”どころか、背が低い、学歴なし、収入なしの”三低”
(学生結婚だったので)おまけに、短気、単純、短足の”三短”にもかからわず、
うまくだまされ、結婚届に印を捺してしまいました。
夫は東(あずま)男、私は京女とことわざになるような夫婦なのですが、
家庭での彼は、夫として、父としての自覚がまったくなく、子どものために
食べやすく作ったおかずを食べるし、いじわるを言って子どもを泣かせるし、
子どもに焼きもちをやくしと35歳の頭のはげた万年反抗期の子どもなのです。
(注:この文章は12年前に書かれたものですので、その時は35歳でした。)
オーブンレンジの使い方、留守番電話の聞き方、自分の衣類の場所も何も
判からない本当に手のかかる夫で、5歳の息子が彼の世話をしている事が
あるくらいです。
彼の楽しみは、やっぱり旅行でしょうか。普段あまり家にいないので家族団欒
といえば、病院を替わる時に行く長期の旅行なのです。
行き先を決めず、こっちの国、あっちの国と親子3人でふらふら!
今度は今年2月に生まれた娘も一緒に親子4人で息子がお気に入りのタイで
象に乗りたいものです。
彼が学生時代「色平さんを知る会」という学生サークルがあって、本人は
「知る必要がない」と言っていましたが、私に講師依頼がありました。
とにかく不思議な人に見えるようですが、私は100年に1人の奇人変人
と思っています。
彼に、ごく普通の家庭があるというのは、妻の私が言うのは変だけれど
本当に不思議なことです。
でもこの人に家庭がなかったら、今よりもっと変わり者で普通のことが
判からなかったと思います。
夫は「かすみは、世の中の人のために僕と結婚してボランティアをしている」
と言っています。
「僕より先に死ぬな。老後は頼む」
と私に言うので、
「私は哲郎君よりも長生きしても、夫婦を続けているとは限らない」
と言い返すこのごろです。
彼がちゃんと医者をしているか一度、診療参観をしてみたいものです。
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